この結婚が間違っているとわかってる
さすが急成長中のIT企業の社長様だ。小花としては指輪なんてどうでもよかったのに。嫌いなはずの小花にこんなに高価な指輪を渡すなんて伊織はどうかしていると思う。
仮にも俺の妻なんだから安っぽい指輪なんて嵌めてんじゃねぇよという見栄だろうか。
(まぁどうでもいいけど)
インタビューの時間が迫っているので小花は美波と別れて営業部に向かった。そっと様子を窺うと、会社の売上や利益を担う重要な部署だけありフロア内はとても忙しそうだ。
電話応対や打ち合わせなどの声が響いて、どの社員も仕事に集中している。その中から倉橋の姿を探すけれど見つからない。
出先から戻ってきたばかりの男性社員に声を掛けて倉橋を呼んでもらうことにした。
しばらくすると甘いタレ目をくしゃっとさせて微笑む倉橋が小花の前に現れる。
「営業一課の倉橋です。今日はよろしくお願いします」
「広報課の武藤です。こちらこそ、よろしくお願いします」
同じ会社で働いているとはいえ小花は倉橋とは所属部署も違うし、年齢も倉橋の方がふたつ上なので話をするのは今日が初めて。近くで見るとさすが女性社員たちから人気のある男性だと小花は納得した。
伊織ほどではないが倉橋も背が高い。体のラインにぴったりと合うネイビーカラーのスーツがよく似合っている。