この結婚が間違っているとわかってる

社内でも花形部署と呼ばれる営業部。一課に所属する入社六年目の倉橋は次々と大きな契約を取ってくるエース的存在であり、社長とは親戚関係にあると噂されている男性社員だ。

整った容姿に高身長な見た目から女性社員たちに人気がある。

けれど倉橋は女性の誘いには一切乗らないと有名だ。独身で、特定の彼女もいないので、もしかすると男の人が好きなのではという噂もあるらしい。というのを小花は以前、美波から教えてもらった。

「小花に言っておくけど、インタビューをきっかけに倉橋さんと良い雰囲気になるのは禁止だから」
「ならないよ。っていうか良い雰囲気ってなに。私、結婚してるけど」

小花は左手の薬指で光る指輪を美波に見せた。

婚姻届を提出した日に伊織から貰ったものだ。結婚式の予定はないけれど、指輪はあった方がいいとお互いの左手の薬指に結婚の証として嵌めている。

一緒に買いに行っていないので値段はわからない。でもどこのブランドかはわかったので調べてみたところ、小花の給料三カ月分では到底手が出ないような高級ブランドの指環だった。
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