この結婚が間違っているとわかってる
伊織が小花を好きだと気付いて拓海は身を引いたに違いない。でもずっと小花を想い続けていた。咲と結婚したのは小花への想いを断ち切るためもあったのかもしれない。
拓海と小花はずっと前から両想いだった。片想いだと思っていたのは当人たちだけで、ふたりを一番近い距離から見ていた伊織だけがその真実に気付いていた。でも、それをどちらにも言わずに黙っていた。言えばふたりが結ばれてしまうから。
(ズルいよな、俺は……)
こんな性格だから自分は小花に選ばれなかったのだ。
『ごめん』
昨日の小花の言葉を思い出す。
『伊織のことそういう風に見たことなかった』
とっさに想いを伝えてしまったが予想通り振られた。
小花に少し考えているような素振りもあったから、もしかしたら……と、淡い期待を抱きはしたがやはり伊織の気持ちが届くことはなかった。
あれ以来、小花とはぎくしゃくした関係が続いている。もう元には戻れないのかもしれない。
こんなことになるなら好きだなんて言わなければよかった。でも、どうせもう想いは伝わらないし、これからの伊織の行動によっては小花は拓海と結ばれる。
だからこれでよかったのかもしれない。