岩泉誠太郎の恋

仕事と彼女なら、彼女

彼女の内定式が無事済んだので、久し振りに啓介と宗次郎さんの3人で集まり、打ち上げという名の報告会をした。

「いやー、無事入社が決まって一安心だね。本当、全部俺のおかげ。誠太郎に大きな貸しができちゃったなー」

「いや、宗次郎さんが怪し過ぎるせいで、俺も相当フォローしましたよ?宗次郎さん、胡散臭いんですよ」

「胡散臭いって何だよ。俺がそうならお前も相当胡散臭いぞ?」

「残念ながら宗次郎さんと違って俺は信頼されてますから。もはや親友と言っても過言じゃないレベルだし。本当一緒にしないで?」

この二人は一体何を争っているんだ?

「まあまあ。啓介も宗次郎さんも、本当に色々ありがとう。まだしばらく手を貸してもらうことになるけど、この恩は必ず返すから、これからもよろしく頼むよ」

「何だよ改まって。貸しだなんて冗談だから気にすんなって。あと3年、俺が職場で安田さんを守りきってみせるから、心配しないでお前はお前で頑張れよ」

「そうそう。なにげに俺も楽しんでやってるから。だってウケない?椿ちゃんが三角商事の子会社に入社するだけでストーカーかもって気にしてんだよ?ストーカーっていうのは誠太郎みたいなやつのことだろ?」

「それなー!」

さっきまで言い合ってた癖に、二人してばか笑いしやがって。本当むかつくな。

「誠太郎の方も一段落ついたんでしょ?」

「まあな。でもあくまであれは手土産みたいなもんだから、入社してからが本番だよ」

「いやいや。あれは学生の手土産レベルじゃないから。普通あのシステム作ろうとしたら、コンサル入れて、外注頼んで、軽く一千万はかかるんじゃない?関係ないのにうちの会社の上の方でも、お前のことが噂になってたよ?」

「そんなことよりも俺は彼女のことの方が心配だよ。俺のことなんてもう忘れてるんじゃないか?彼女の目に入るなら、インスタ女子みたいに自撮り写真を毎日アップしたい程不安でしょうがない、、」

「何それ、いいんじゃない?誠太郎、インスタやってよ!俺、椿ちゃんに毎日見せるよ!」

啓介達にのせられて、その場でインスタを入れ自撮り写真をアップした。わざわざ店の外に出てエレベーターの鏡を使った全身写真をアップしたところでからかわれていることに気づいた。速攻でインスタは削除した。

後日、誰かがスクショした俺の幻のインスタ画像が、学校で拡散されたらしい。これが噂のデジタルタトゥーというやつか。恐ろしい。

でもその写真が彼女の元にも届いたのなら、そう悪くもないと思った。
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