図書室の姫




トントン────


体育館には久野充美[クノ ミツミ]の足音だけが響く。


キュイィ


マイク独特の耳障りな音が鳴る。


久野充美の顔は良く見えなかった。
なぜなら、前髪が鼻の辺りまであるのだ。後ろは邪魔そうに腰まである長い髪を緩く一つに縛ってある。


「けっこう可愛くね?」

「…」


可愛いかどうかは別にして、久野充美に目を奪われた。あんなダルそうなヤツが1位だなんて…




───────…
─────…

スピーチも後半に差し掛かった頃、

「くぅー…」

隣からは寝息が…
「ヒロ…寝てるし、はぁ…」


ギュウィィン!



当然、
いきなりまたあのマイクの音がした。




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