本部長は慇懃無礼
すれ違い

すれ違い

定時の6時になり優しい音楽が流れて来た。


毎日この終業を知らせるアラームが鳴ると、社会人としての鎧が解けて無くなっていくような気がした。


「本部長、こちら今週中に用意する事になっていた書類一式です。そしてクライアントや役員と役員とのアポも全て取ってあります。出張の際のチケットの予約も完了しております」


京子は一週間でやるはずだった仕事を一日でやり切った。昨夜出会った無礼な性格の小池に何としても見返したい一心だった。


「おお、すごいね。さすがだよ。じゃあ今日はもう帰ってもらって結構だよ」


上から目線の小池にまたもやムカついたが、この後は唯一の救いである楓と林との飲み会がある為さっさと部屋を出る事にした。


「それでは小池本部長、お先に失礼します」


「お疲れ様」


京子は静かに扉を閉めて部屋を後にした。


京子が部屋を出ていった後、小池はネクタイを緩めて深呼吸をした。


「ふぅ〜。緊張した。やっぱり綺麗だよな、山田さん」


小池はスーツのポケットからスマホを取り出すと一本の電話を掛けた。
< 8 / 24 >

この作品をシェア

pagetop