本部長は慇懃無礼
京子は会社を出ると林が予約してくれたバーに向かった。入口には楓と林がいた。


「本日の主役が来ました〜。京子、お疲れ!」


「お疲れ。もうクタクタで歩けないかも」


「先輩、目の下クマできてますよ」


「今週のやる事を一日でやりきったからクマもできちゃった」


「京子、そんなに無理したら体壊すよ?」


「そうですよ。とりあえず中に入って美味しいお酒でも飲みましょ!っね!」


「ありがとう、二人とも」


三人はビルの地下にあるバーに入って行った。


「あれ……私眠っちゃってた?」


勢いでお酒を飲みすぎたのか、気づいたら眠ってしまっていた。


「かえで〜、はやし〜。どこにいるの?」


寝ぼけながら呼んでも返事が無い。眠い目をこすりながら起き上がると、見覚えのない部屋にいることに気づいた。


「あれ?ここはどこ……」


扉が開いて誰かが部屋に入って来た。


「あなたは一体誰……」


「よく眠れましたか、山田さん」


聞き覚えのある声だが林の声では無い。
人影が近づくにつれて鮮明に見える顔。


「……本部長?!」


「やっと気づいた。一体どれだけ飲んだらこんなにベロベロになるんだよ」


「私、楓と林と飲んでたはずなのになんでここにいるんですか?」


「俺がバーから電話がかかって来た時には既に二人はいなかった」


「私の事置いてどこ行ったんだろ……。それよりも私家に帰ります!」


小池はあたふたする京子に着替えを渡した。


「帰るにしてもその格好じゃ無理があるだろう」


「えっ?」


京子は自分の服装を見てびっくりした。男物のワイシャツ一枚を無防備な格好で着ていた。


「キャーー! この変態!」
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