何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─

親友

LINEを見ると、親友のこころから、大量のメッセージが来ており、郁は目を疑った。


「郁!瞬から聞いたけど、さっき倒れたって本当なの?心臓マッサージされながら救急車で運ばれたってどういうこと?瞬のつまんない嘘だよね。」

「返事ちょうだい」

「寝ちゃった?また明日学校でね。絶対来てね」

「なんで学校来てないの?」

「担任が、郁の病気が悪化してしばらく休むって言ってたけど、嘘でしょ。昨日まで普通に話して笑ってたじゃん。」

「返事しなくてもいいから、既読だけでもつけて」

「施設に行ってきて佐藤さんと話した。郁の意識がこのまま戻らないかもしれないなんて、私信じないから。」

「明日文化祭だよ。眠ってる場合じゃないよ」

「文化祭、楽しみにしてたじゃん。早く来てよ。郁がいないとつまんない」

「郁に会いたい。会って話させて」

「お願い、起きて」


こころ、本当にごめん…
郁は申し訳なさで涙が出た。

郁はすぐに返信を打つ。

「こころ、心配かけてごめんね。ずっと眠ってたみたい。でももう大丈夫だから安心して。私も会いたいよ。先生が15分なら面会してもいいって!」



その日の夕方、学校帰りのこころが息を切らせてやってきた。

「郁…!」

郁が倒れたと聞いてからずっと不安で張り詰めていた気持ち、やっと会えた嬉しさ、痩せてたくさんの管に繋がれている郁を見た衝撃など、たくさんの感情が入り乱れ、こころは大粒の涙を溢した。

「こころ、心配かけちゃって本当にごめんね。もう大丈夫だから。手術をしたらすぐに治るって」

「手術で治るの!?本当によかった…」

「でも、手術にむけて色々検査とかがあるから、しばらくは会えないんだ。忙しくて、連絡する時間も無くて。また手術が終わったらこっちから連絡するね。簡単な手術らしいから、心配いらないよ!」

郁は嘘をついた。

私の病状が悪いと知ったら、こころは自分を犠牲にして毎日でも病院に来てしまうことだろう。

手術を受けないつもりということを知ったら、耐えられないだろう。

強いように見えて脆さがあるこころに、これ以上心配をかけてはいけない。

彼女は幸せになるべきなんだ。

瞬には片想いだと思っているけど、実は両思いの彼と、いつか結ばれて、ずっとずっと幸せに暮らしていくべきなんだ。

私のために、貴重な時間を無駄にさせてはいけない。

2人の時間も奪ってはいけない。

これまでたくさん私の心配をしてくれた優しいこころに、これ以上心配をかけ、悲しい思い出を増やしてしまいたくない。

私は絶対、死が訪れるまで、隠し通す。

こころが大好きだからこそ、嘘をつく。

こころとはもう会わない覚悟をしていた。
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