何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
第四章
目覚め
郁が目を覚ましたのは、手術の2日後の朝のことだった。
胸の手術の跡の激しい痛みで目が覚める。
ここは、どこ…?
「郁ちゃん、目が覚めたね」
ガーゼ交換の処置に来ていた藤井が声をかける。
「手術を無事に終えて、すぐに呼吸も戻ったのに、なかなか目を覚さないからみんな心配したのよ。」
ほっとした笑顔を見せる藤井。
「処置の時間だから、ちょっとごめんね」
藤井が郁のパジャマを脱がせようと手を伸ばすと、途端に郁の体が強張り、手で胸を守ろうとする。
「…郁ちゃん、びっくりしたよね、ごめん。胸の傷のガーゼの交換の時間だから、交換させてもらうね」
「…何の…話…?」
かすれた声で郁が問う。
「…郁ちゃん?どうしたの?手術、無事に終わったんだよ」
「…手術って…?」
「…倒れたこと、忘れちゃった?郁ちゃんが手術を了承してくれたあと、すぐに竹内先生が手術をしてくれて、今目が覚めたんだよ」
「……倒れた?私が…?竹内…先生…?」
郁は、怪訝な表情をしながら話す。
「…看護師さん…私、病気なの?…ここを手術したから、こんなに痛いの?」
手術の跡を指差しながら、混乱し、怯えた様子の郁。
「すごく痛いし、こんなに管だらけで、私、どうしちゃったの…?」
郁の大きな目から、ポロポロと涙がこぼれる。
「……郁ちゃん…。…大丈夫だよ。先生を呼んでくるから、少し待っててね」
郁を不安にさせないよう、笑顔で話し、スタッフルームに走った。
「竹内先生!郁ちゃんの意識が戻りました!」
「よかった!すぐ行きます!」
「…竹内先生、それが…郁ちゃんはどうも記憶障害を起こしているようで、手術を受けたことどころか、自分の病気のことも、私のことも、覚えていない様子で混乱しています」
「…!」
走って病室に駆けつける碧。
「郁ちゃん!目が覚めたんだね!」
碧が声をかける。
「……お医者さん…?」
眉をひそめ、まるで全く知らない人物を見るような目をする郁に、碧は動揺する。
「…君の主治医の竹内だよ。竹内 碧だ。君は心臓の病気で入院していて、危険な状態になっていたので手術したんだ。…覚えてない?」
申し訳なさそうに首を振る郁。
「…そうか…。…君は今回、本当に長い時間、苦しい手術を頑張って受けたんだ。目覚めたところで、体も頭もとても疲れていて、きっと少し混乱しちゃってるんだね」
また泣き始める郁。
「大丈夫だよ、きっと思い出せるようになる。」
碧は郁に心配しないように、何度も大丈夫だと伝える。
まるで、自分にもそう言い聞かせるかのように。
胸の手術の跡の激しい痛みで目が覚める。
ここは、どこ…?
「郁ちゃん、目が覚めたね」
ガーゼ交換の処置に来ていた藤井が声をかける。
「手術を無事に終えて、すぐに呼吸も戻ったのに、なかなか目を覚さないからみんな心配したのよ。」
ほっとした笑顔を見せる藤井。
「処置の時間だから、ちょっとごめんね」
藤井が郁のパジャマを脱がせようと手を伸ばすと、途端に郁の体が強張り、手で胸を守ろうとする。
「…郁ちゃん、びっくりしたよね、ごめん。胸の傷のガーゼの交換の時間だから、交換させてもらうね」
「…何の…話…?」
かすれた声で郁が問う。
「…郁ちゃん?どうしたの?手術、無事に終わったんだよ」
「…手術って…?」
「…倒れたこと、忘れちゃった?郁ちゃんが手術を了承してくれたあと、すぐに竹内先生が手術をしてくれて、今目が覚めたんだよ」
「……倒れた?私が…?竹内…先生…?」
郁は、怪訝な表情をしながら話す。
「…看護師さん…私、病気なの?…ここを手術したから、こんなに痛いの?」
手術の跡を指差しながら、混乱し、怯えた様子の郁。
「すごく痛いし、こんなに管だらけで、私、どうしちゃったの…?」
郁の大きな目から、ポロポロと涙がこぼれる。
「……郁ちゃん…。…大丈夫だよ。先生を呼んでくるから、少し待っててね」
郁を不安にさせないよう、笑顔で話し、スタッフルームに走った。
「竹内先生!郁ちゃんの意識が戻りました!」
「よかった!すぐ行きます!」
「…竹内先生、それが…郁ちゃんはどうも記憶障害を起こしているようで、手術を受けたことどころか、自分の病気のことも、私のことも、覚えていない様子で混乱しています」
「…!」
走って病室に駆けつける碧。
「郁ちゃん!目が覚めたんだね!」
碧が声をかける。
「……お医者さん…?」
眉をひそめ、まるで全く知らない人物を見るような目をする郁に、碧は動揺する。
「…君の主治医の竹内だよ。竹内 碧だ。君は心臓の病気で入院していて、危険な状態になっていたので手術したんだ。…覚えてない?」
申し訳なさそうに首を振る郁。
「…そうか…。…君は今回、本当に長い時間、苦しい手術を頑張って受けたんだ。目覚めたところで、体も頭もとても疲れていて、きっと少し混乱しちゃってるんだね」
また泣き始める郁。
「大丈夫だよ、きっと思い出せるようになる。」
碧は郁に心配しないように、何度も大丈夫だと伝える。
まるで、自分にもそう言い聞かせるかのように。