ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
麻布にある高級マンションの高層階で、ふたりで暮らすのにもだいぶ慣れてきた。毎日ホテルに泊まっているような感覚になる住まいだけれど、史悠さんの匂いや痕跡がそこかしこで感じられるのが一番の贅沢なんじゃないかと思う。
ただ、今日はこの部屋にいても胸がざわめいて落ち着かない。
午後六時半、広くて綺麗なペニンシュラキッチンで、夕飯の用意も全部終えたところで史悠さんが帰ってきた。私はエプロンをはずし、広場での出来事でイライラが増したまま玄関に向かう。
靴を脱いで上がった彼は、私を見て会社では見せない笑みをふわりと浮かべる。
「ただいま」
いつもの挨拶から、流れるように後頭部を支えられて甘いキスを……したいけれど、まだダメ!
「……これは?」
咄嗟に顔と顔の間に手を挟んで阻止した。やや不服そうにする彼を、こちらもムッとした顔で見上げる。
「なんなんですか、風柳さんって。ふたりしてなんで名前で呼び合ってるんですか」
「あ?」
「さりげなくボディタッチしてたし……いや、さりげなくっていうか、わざとらしく? 軽々しく触れないでほしいです、私の旦那様に」
刺々しい口調で不満を吐露すると、ぽかんとしていた彼は「くっ」と噴き出した。口元に軽く手を当てて喉を鳴らす彼に、私は口を尖らせる。