ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「どうしよう……楽がいなくなったって!」

 この広いホテルの中で迷子になるという、まさかの展開。一難去ってまた一難だと眉根を寄せつつ、とりあえず詳しい状況を聞く。

 風柳さんが挨拶をする間、マネージャーの女性が楽くんの面倒を見ることになっていた。しかし、トイレに行くとひとりで走っていってしまい、彼女が追いかけたがトイレにはいなかったのだそう。

 今、マネージャーが捜しながら電話をかけてきたらしい。俺はまだ会場を抜けるわけにいかないが、ホテルのスタッフにも伝えたようなので早く見つかることを願う。

「戻ってくるかもしれませんから、風柳さんはここにいたほうがいいですよ」
「ええ……でも、心配でいてもたってもいられない。あの子、喘息持ちだから」

 風柳さんはとても不安そうにスマホを握りしめ、初めてその事実を明かした。

「最近風邪っぽかったし、発作が出やすくなってる時なの。薬は私が持っているし、対処できずに悪化したら危ないのよ。最悪の場合、窒息することもある」

 確かに喘息死というものも聞いたことがある。母親にとっては迷子になっただけでも心配なのに、持病があるなら余計に気が気ではないだろう。

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