ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 早く着いたので、そわそわしながら約束の時間になるのを待つ。その五分前に、カランと音を立てて入り口のドアが開き、ひとりの女性が入ってきた。

 品のあるショートカットで、少しやつれているものの綺麗な顔立ちの女性。彼女を見た瞬間、感じるものがあって目が離せなくなった。

 周りを見回した彼女も、私と視線が合うとしばし固まって、目を大きく開いていく。

「……依都?」

 名前を呼ばれ、心臓がひと際大きく揺れ動いた。

 この人が、私のお母さん……。記憶にぼんやりと残っている母の面影を、目の前の彼女に重ねていく。知っているのに知らない人みたいな、不思議な感覚だ。

 母は信じられない気持ちと感動が交ざったような顔で呟く。

「依都……大きくなったわね……」
「そりゃあ……もう二十六歳だから、ね」
「そっか、そうよね」

 うわ、めちゃくちゃぎこちなくなってしまう。気まずい空気に包まれるも、史悠さんが「どうぞ、こちらへ」と冷静に席へ促してくれた。

 私を安心させるように微笑みかける彼と一度目を合わせ、心を落ち着かせて口を開く。

< 230 / 249 >

この作品をシェア

pagetop