ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 一度絶頂を迎えたら、心地よい気だるさを感じながらたわいない話をして、髪を撫でてくれていた手が身体をなぞり始めると、再び濃密な触れ合いになっていく。

 これが、会社では鬼と呼ばれる彼の夫としての姿。打算も計算もなくただただ愛してくれる、私も大好きな甘い獣だ。

 この夫婦関係はいつまでも続くと信じられる。……とはいえ、問題がまったくないわけではないのだが。

 キスが唇から首筋、胸へと移って自然に甘い声が漏れ、心拍数も息も上がり始めた時、彼がふとなにかを思い出したように顔を上げた。

「……どうしたの?」
「さっきのが最後だった」

 心なしか残念そうに、枕元に置いたままだった避妊具の箱を手に取る彼。どうやら中身はもう残っていないらしい。

 空のそれをダストボックスに放った彼は、私に覆い被さって危険な色気をたっぷり含んだ瞳で見下ろす。

「このままする?」

 ドクンと心臓が揺れ、ほんの少し後ろめたい気持ちになった。

 もう夫婦なのだし、社員に噂されていた通り跡取りも望まれている。本来なら避妊する必要はないのだけれど……私にはまだ頷けない理由がある。

 誰より彼を愛しているのに、子作りをためらってしまう理由が。



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