ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
数日後、仕事終わりに再びしいじへ向かった。彼女の中で俺の存在が薄くなってしまう前にもう一度会っておきたいと、なんとなく逸る気持ちで。
温かみのあるレトロモダンな店内に入ると、すぐに依都さんが出迎えてくれる。彼女は目を丸くして「御鏡さん!」と驚いた声を上げ、ぱあっと表情を明るくした。
その顔も愛らしいが、今日は紅葉の柄の着物姿。この間とはまた違う、美しくたおやかな雰囲気にドキリとした。
そんな動揺は表さずに案内されたカウンター席につくと、依都さんはお品書きを差し出して丁寧に頭を下げる。
「この間はありがとうございました。いただいた琥珀糖、すごく綺麗でもったいなくてまだ食べられてません」
えへへ、と笑う彼女を見て、俺の頬も緩む。
あの時も『すごく嬉しい。最高の誕生日です』と言っていた。お世辞かもしれないが、俺に祝われたくらいでそんなに喜んでくれるとはな。
「観賞用にするのももったいないだろ。食べて感想を教えてくれよ」
「ですよね。あ、じゃあ今度一緒に──」
ものすごくナチュラルにそこまで言った彼女は、はっとした様子で頬が赤くなった。決して計算ではなさそうなところが胸をくすぐられる。