ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「って、なに言ってるんでしょうねぇ! 大の大人が一緒にお菓子食べようって、恥ずかしい……」
「いいよ」

 俺が端的に応えると、あたふたしていた彼女は動きを止め、目を見張る。

「でも、琥珀糖を食べるだけで満足?」

 やや挑発的な目で見上げ問いかける俺に、彼女はますます顔を赤くして小さく首を横に振る。

「……正直、全然」

 彼女の口からぽつりとそんな言葉が返ってきて、胸がぎゅっと掴まれると共に笑みがこぼれた。

 俺たちの気持ちの重さが釣り合っているように感じるのは、おそらく自惚れではないはず。初恋かとツッコみたくなるような甘酸っぱさが広がって、不快ではないむず痒さに襲われた。

 ふたりでそんな話をして、注文を取って依都さんが奥へ下がっていく。その時、ふとカウンターのほうから視線を感じた。

 そちらへ顔を向けると、料理人の若い男性が俺を凝視している。その妙な気迫に二度見してしまった。

「お客様……失礼ですが、依都のご友人ですか?」

 じっとこちらを見たまま問いかけられ、俺の眉がぴくりと上がる。

 この男は依都と呼ぶほど仲がいいのか。じり、と胸の奥のほうが疼くのを感じつつ、表情は変えずにとりあえず答える。

< 71 / 249 >

この作品をシェア

pagetop