ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 祖父の歯切れが悪くなってきたので嫌な勘が働いて、ふたりの間でどんな話になっていたのかを詳しく問い詰めた。

 どうやら御鏡さんは、新たな品種の酒米を作るのを渋っていた祖父をその気にさせるために、私と母の仲を取り持つという交換条件を出したらしい。

 私と会っていたのは、親しくなって心を許せる存在になろうとしたからだったのだ。現に私は彼の言葉をすんなり受け入れて、母に対する考えも少し変わり始めていた。

 仕事にもいい影響が出るし祖父のためにもいいことだし、御鏡さんに悪意はなかったのかもしれない。私にとっても、もちろん母と和解できるならそのほうがいいだろう。

 そう、彼はなにも悪いことはしていない。ただ──私が勝手に彼を好きになって、勝手にショックを受けているだけ。

 私に会いに来てくれていたのが純粋な好意じゃなかったのだとわかって、期待していた自分に泣きたくなるほど呆れているだけだ。


 御鏡さんはなにかを伝えようとしていたけれど、あのまま聞く気にはなれなくて水族館を飛び出してきてしまった。

 幸い駅が近かったのですぐに電車に乗り、アパートの最寄り駅で降りたのだが、なんとなくひとりになるのが心細くて寄り道をしている。

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