Crazy for you
唐突に訪れたハグは、望んでいたはずなのに困惑の方が大きくて戸惑いが隠せない。
「なんで、田崎と駅前の公園にいたの?」
孝ちゃんの声色は固くて、抱きしめられているはずなのに、距離が遠く感じた。
田崎くん?
公園ってさっきのこと??
見られていた、ということなんだろうか。
もしかして私、疑われてる??
そう気づいた時、私の中に湧き上がったのは”怒り”だった。
「孝ちゃん疑ってるの? 私と田崎くんのこと。たまたま会って話聞いてもらっただけだよ」
ゆっくり孝ちゃんを押し返して、自分でも驚くほど冷たい口調でそういった。
孝ちゃんの顔は見れなかった。
「孝ちゃんだって駅前に女の人といたよね? 二人で会ってたの?」
「二人で会ってた女の人?」
孝ちゃんは心当たりがないらしく考え込んでいるようだった。
「この間会った女の人といたよね?」
「……ああ、サークルの待ち合わせかな。今日夜は飲み会あるから」
「二人だけに見えた」
「一番乗りが俺で二番手が女の子だったからじゃないかな」
……そっか。あのあと、みんなきたんだ。
やっぱり想像していた最悪じゃなかったと安堵すると同時に孝ちゃんも疑ってたわけじゃなくて不安だったのかなと思い当たって怒りが消えていく。
「ごめん」
「え?」
「俺、香帆のこと不安にさせたな。田崎とのことも、気分悪くさせてごめん」
「あ、ううん。私こそごめん。疑っちゃって」
素直に孝ちゃんが謝ったので、私も慌てて謝る。
孝ちゃんだって疑われていい気はしなかっただろう。
「飲み会はよかったの?」
飲み会だったらこれからだったんじゃないだろうか。
「うん。それどころじゃなかったから」
孝ちゃんは息をついて、力なく笑う。
こんな余裕がない姿は新鮮で見たことがない。
今日はなんか珍しいことづくしだな、と思う。
「田崎ってさ、良い奴だから。香帆が好きになってもおかしくないって思ったらいてもたってもいられなくなった。ていうか、香帆、楽しそうに笑ってたから妬いた」
え? 妬いた……?
孝ちゃんて、ヤキモチ妬くの……?
まさかの発言に私は孝ちゃんを思わず見てしまった。
孝ちゃんの頬はほんのり紅潮していて、腕を口許にあてている。
「孝ちゃんって私のこと好きなの?」
思わず不安がポロリと顔を出してしまい、孝ちゃんが怪訝な顔になった。
「え?」
「あ……孝ちゃん、付き合ってもいつも通りだったから。好きっていってくれたわけでもないし、なんか私が舞い上がってるだけなのかなって」
ごにょごにょいうと、孝ちゃんが私の目をのぞきこんだ。