Crazy for you

「あと」
「あと?」
「香帆は、試合とか受験とか俺が負けるとかうまくいかないとか冗談でもそんなこというと、怒ったよね。『思考がネガティブになるとどんどん最悪を想像しちゃうから、ポジティブに考えよ 』って。それに、俺はいつも励まされてたよ」
「……そっか」
私が知らないだけで孝ちゃんを元気づけられたんだ。
私でも孝ちゃんの役に立ってると思うと胸が弾んだ。
「香帆は? いつから?」
「私はたぶん、中学で孝ちゃんのバスケみたときかも。点ばんばんきめて、かっこいいなあって。もちろんその前から、大好きだったけど、恋だって思ったのはその頃かな」
「じゃあ片思いも俺が先輩」
「あ、でも気持ちじゃ負けてないからね!」
「じゃあ勝負ね」
「え?」
孝ちゃんの手が腰に伸びてきて、引き寄せられる。
私は日も明るいし外だということで動揺した。
「え、ちょっとまって。外だし、ここ」
「関係ある? 俺は一分一秒でも香帆と離れたくないんだけど」
「関係あるよ!ご近所さんにみられる!」
「香帆の彼氏が俺だってしらしめるいいチャンスだな」
私の抗議にことごとく反論し、孝ちゃんの唇が首や目に熱を落としていく。

「まって!」
「ギブアップ?」
「ギブアップ!」
孝ちゃんはクスクス笑いながら私を解放した。
やっぱり孝ちゃんは一枚上手で、私は勝てない。
私の真っ赤になった顔を見て楽しそうに笑う孝ちゃんはお兄ちゃんの時代では見せなかった顔をしていた。
「じゃあ俺の勝ち」
「卑怯ー!」
「もういっかいやる?」
「っ。やりません!」
「残念」
舌をぺろっとだして、意地悪な孝ちゃんに私は思わず唇をとがらせた。
「意地悪孝ちゃん」
「いったでしょ。俺は独占欲強いし、子供っぽいって。こんな俺、嫌い?」
今度は子犬のような瞳で私を見てくる。

……かわいい。甘えんぼだしてきた。

「……嫌いじゃないよ」
孝ちゃんは私の言葉に満足そうに笑って、私の頭を撫でた。

たぶんこれ、計算でやられてる。完敗だ。
いつも通りも悲しいけど、恋人モードは恋人モードで私には難易度が高くてふりまわされっぱなしだ。
でも、片思いの頃より何倍も幸せで、何倍も楽しいな。

これから先も。ずっとそばにいてね。
私はきっと昨日よりも今日、今日よりも明日、その先も孝ちゃんが好きだと思うから。

つまり、私はずっと貴方に夢中なのです。


fin.


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