Crazy for you
「……ありがとう、話聞いてくれて」
「たいしたこといえずだけど」
「ううん。落ち着いた」
小さく笑って、背伸びをする。
自分が落ち着いてくると、絵里のことを思い出す。

そういえば、結局タイミングがなくて聞けてなかったな。

「田崎くんは好きな子とかいないの?」
「いるよ」
あっさりと返ってきた言葉に、ドキッとした。
「え、クラスの子?」
「うん。南條」

え!!!

絵里の名字は南條だ。
てことは、両思いじゃん!!

私はなんだか嬉しくなってニヤニヤしてしまう。
「私、絵里と仲良いしキューピットしようか?」
「いや、いらない」
淡白に断られて、私の勢いも消える。

キューピットなんてしなくても両思いだけど、お互いの気持ちを知った身からするとなんとかしたくなってしまう。

「自分の力でどうにかしたいし、俺からちゃんと伝えたいから」
二ッと口角をあげて、照れることも無くそういう姿は普通にかっこよくて胸が一瞬ときめいた。
「そっかあ。なんで絵里のこと好きなの?」
私の出る幕じゃないんだなと見守ることにして、それとは別の好奇心が疼いてつい聞いてしまう。
「……それはいえないな」
「えーなんで?」
「弱点晒したくないから。俺の弱い部分知ってるのは、南條だけでいいの」

つまり、田崎くんは絵里に弱点を晒したことがあると。
なにそれ。ふたりの秘密じゃん。

「俺のことより、七瀬さんは自分のこと考えたら?」
密かにときめいていると、話を戻されて、私は現実を思い出す。
「……うん。そうします」
まさにそのとおりだ。
他人のことどうこうより、まずは自分のこと。
「私、帰るね」
「おう」
立ち上がった私につられて田崎くんも立って、そのまま公園の入口で別れた。

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