アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…さて、我が店最初のお客さん、小花衣先輩とその従姉妹さんが帰ってしまうと。

またしても、閑古鳥が鳴き始めた。

暇だなぁ…トランプが捗る。

しかも、結局大富豪も負けまくってる。

さっきから、もう何度負けたことか。

雛堂が強過ぎて、手も足も出ないんだけど。

何度やっても負けまくるし、おまけに、ずっとトランプばっかりやってると。

「…飽きたな…」

「朝から、ほぼずっとトランプやってるもんな」

「雛堂はまだ良いじゃん、ずっと勝ってんだから…」

俺なんか、ずーっと負け続けてるんだぞ。

ババ抜きから始まって、大富豪やって、七並べやって、神経衰弱やってポーカーもやったけど。

何やっても負け続きで、もう悔しくもなくなってきた。

そうこうしているうちに、時間が来てホール担当の交代要員となっているクラスメイトが、教室に帰ってきた。

客席に座って、接客の代わりにトランプに夢中になっている俺達を見て、「あっ…」みたいな顔になっていた。

お察しの通り。最高に暇だよ。

店番宜しくな。

「よし。このまま待ってても人、来そうにないし。悠理兄さん、今のうちに新校舎の様子見に行こうぜ」

と言って、雛堂が立ち上がった。

「見に行こうぜ、って…。シェフが店放っとく訳にはいかないだろ」

万が一、ないとは思うけど万が一、俺達がいない間に客が来たらどうするんだ。

ないとは思うけど。

「一応レシピはあるから、作ろうと思えばま作れるし。それに、五、六人分なら作り置きもしてあるんだから、クラスメイトに任せとけば大丈夫だろ」

「それは…。でも、俺達が店を空けたら…」

「別に良いですよ。それなら、僕が残りますから」

と、店番を申し出る乙無。

「僕は文化祭なんて退廃的なイベント、興味ありませんからね」

「強がってるだけだろ…?」

「寿々花さんの様子を見に、メイドカフェ、行かなくて良いんですか?」

「ありがとう。しばらく留守を頼むよ。行ってくる」

一瞬で心変わりした俺は、乙無と数名のクラスメイトに店を任せ、新校舎に様子見に行くことにした。

…え?そんな動機の為に、店主が店を留守にして良いのかって?

世の中にはな、優先順位ってものがあるんだよ。分かるか?

「じゃ、自分も悠理兄さんに付き合うかな。行ってきまーす」

俺は雛堂と共に、教室を出て。

そのまま、歩いて新校舎に向かった。
< 187 / 645 >

この作品をシェア

pagetop