アンハッピー・ウエディング〜後編〜
メイドカフェを後にした俺と雛堂は。

比較的空いている屋台をいくつか回って、旧校舎にいる乙無の為に差し入れを買った。

勿論、全部甘いものだ。

ベビーカステラとフルーツサンド、それからチュロスである。

無類の甘いもの好きな乙無のこと、きっと喜ぶだろう。

退廃的(笑)とか言いつつも、甘いものは別腹だからな。

俺と雛堂はぶらぶらと歩きながら、旧校舎に戻る為に歩き出した。

「あーあ。出来ればもうちょっと新校舎に残って、色んな店や出し物を見て回りたかったんだけどなー」

「…それを言うなよ…」

結局、ここまで来たのに俺達がやったことと言えば、メイドカフェでオムライスとカレーを食べ。

乙無へのお土産を買っただけ。だからなぁ。

せめてもうちょっと満喫したいよな。…無理だけど。

自分達の店、『HoShi壱番屋』を放り出してきてる訳だから。

いくら閑古鳥とはいえ、自分の店を放って遊び歩く訳にはいかない。

「どうせ、帰っても暇なのにな…」

「いやー、分かんないぜ?何かの天変地異が起こって、うちのカレー屋も大繁盛してるかもしれないじゃん」

それはねーわ。

「今頃客が大勢来て、てんやわんやしてたりしてー」

「もしそんなことになってたら、俺は逆立ちして町内一周してやるよ」

「お、言ったなー?マジでやってもらうからな」

はいはい。絶対そんなことにはならないから、全然大丈夫。

旧校舎に辿り着くと、文化祭が始まってからそこそこ時間が経った為か、さすがに朝よりは賑やかになっていた。

へぇ。旧校舎全体、一日中閑散として暇を持て余しているのかと思いきや。

さすがに旧校舎にも、少しずつ人が流れてきたか。

まぁ、そろそろお昼時だもんな。

それに、新校舎はあまりにも人が多過ぎるから。

人の多さにうんざりしたお客さんが、人気の少ない旧校舎に来てるのかもな。

…すると。

俺達が旧校舎に入ろうとすると、丁度同じタイミングで、旧校舎から出ようとするお客さんとすれ違った。

聞き耳を立てた訳ではないが、彼女達の声が俺の耳に聞こえてきた。

「噂通り、美味しかったねー」

「うん。生徒会長…あ、元生徒会長おすすめのお店なだけあるね」

「ここまで歩いてきて良かったー」

…とのこと。

…?元生徒会長おすすめの店?

って、何のことだ?

俺と雛堂は、互いに不思議そうに顔を見合わせた。

「…なんか、話題の店でもあんの?」

「さぁ…。二年か三年の先輩達かな?」

旧校舎では、一学年にひとクラスしかない。

従って、この旧校舎で開かれているお店は、三つだけだ。

俺達のカレー屋と…あとは、二年と三年の先輩達のクラスが出しているであろうお店。

見に行ってないから、先輩達のクラスの出し物なんて知らないけど。

もしかして、旧校舎が朝よりも活気を帯びてきているのは。

その、先輩達のお店のお陰か?

それは凄い。何屋なんだろう。

しかも、元生徒会長おすすめの店だって。後で行ってみようかな。 

…しかし。

俺達は、とんでもない誤解をしていた。

「…ん?…何だあれ…!?」

「え?」

先に気づいた雛堂が、口をあんぐりと開けて立ち止まった。

え、え?どうしたんだ?

釣られて、慌てて雛堂の視線の先を見ると。

…今度は、俺が口をあんぐり開けて立ち尽くす番だった。
< 201 / 645 >

この作品をシェア

pagetop