アンハッピー・ウエディング〜後編〜
俺達の教室、『HoShi壱番屋』のお店の前に。 

ずらっと人が並んで、順番待ちをしているではないか。

え?何これ。

俺の目の錯覚?

幻覚でも見たのかと思って、目をゴシゴシと擦ってみたが。

やっぱり変わらない。店の前に大行列が出来ている。

あれ?ここ新校舎?もしかして新校舎と間違えた?

いや待て、それはない。古ぼけた廊下、古ぼけた教室、いつもの旧校舎の景色だ。

じゃあ、教室を間違えたか?

うっかり、二年か三年の教室に来てしまったのか…と思ったが。

教室のプレートには、ちゃんと『一年一組』と書いてある。

…ってことは、俺達の教室なんだ。

俺達の教室の前に、新校舎の屋台みたいに長い行列が出来ている…。

…え?嘘だろ?

「ちょ、ちょっと通してください。ちょっと」

我に返った俺は、行列を掻き分け掻き分け、教室…店の中に飛び込んだ。

するとそこは、朝の閑散とした空席は何処へやら。

全てのテーブルが埋まっていて、満席状態。

留守番を任されたクラスメイト達が、てんてこ舞いでカレーを運んでいた。

う…。…嘘だろ?

何なんだ?この状況…。

「やっべ!めっちゃ繁盛してんじゃん…!すげぇ!」

これには、雛堂もびっくり。

マジで何があったんだ?俺と雛堂が新校舎に行ってる間に。

天変地異か何か?
 
…そうだ。さっきすれ違ったお客さん達。

美味しかったとか何とか言ってたのは、もしかして『HoShi壱番屋』のことだったのか?

そんなまさか。一体どうして…。ほんの数時間前まで、閑古鳥状態だったのに。

「な、何でこんなことに…?」

「よく分かんねぇけど、やべぇ!つーか悠理兄さん、逆立ちして町内一周しろよ!」

「あ、本当だ…」

…って、ちょっと待て。あれはノーカンだろ。

物の例えって言うか…本気でやるつもりで言ったんじゃねぇよ。

「いや、あれは違うよ。物の例えで…」

「男に二言はねぇんじゃねぇのかよ?」

「だ、だからって逆立ちで町内一周なんて…」

あれは冗談みたいなもので、

と、言いかけたその時。

「シェフが戻りましたね。遅かったですね」

「あ、乙無…って、あんた、何だよその格好?」

留守番をしていた乙無に声をかけられ、その乙無の姿を見て、俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。

両手の手のひらにお盆を一つずつ、更に肘の上にもお盆を乗せ。

頭の上にもお盆を乗せて、空になったカレーを運んでいた。

曲芸師か何か?

あんた、よくその格好で普通に歩けるな。

究極のバランスを保っている。

俺だったら、一歩も歩かずに全部真っ逆さまだな。

「見ての通り、忙しいんですよ。まさに猫の手も借りたい状況です」

「な、何でそんなことに?何でいきなり店が…」

「説明は後です。戻ってきたからには、バリバリ働いてもらいますよ」

と、乙無。

「厨房が間に合わないんです。すぐ戻ってください」

「あ、あぁ。分かった。…あんたこそ、それ落とすなよ」

「半端な人間と一緒にしないでください。邪神の眷属たる僕にとっては、このくらい朝飯前…」

こんな時でも、ドヤ顔を晒して厨二病全開の乙無である。余裕じゃん。

便利だな、邪神の眷属って。
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