アンハッピー・ウエディング〜後編〜
教室の前で待っていたお客さんには、材料切れの旨を説明して、丁重に謝ってお帰り頂いた。

「こんなに待ったのに!」とか、「それならもっと早く言えよ!」とか、逆ギレされることを覚悟していたが。

相変わらず、おおらかで穏やかな新校舎の女子生徒達は。

俺の説明を聞いて逆ギレすることはなく、「あらあら。それなら仕方ないわね〜」と、納得して帰っていった。

本当済みません。

こうなることが分かっていたら、もっとたくさん材料を仕入れて…。

いや、無理だな。あれ以上は、予算が足りなかった。

俺達も新校舎のクラス並みに、潤沢な資金をもらっていればな。

夕方まで営業出来たのかもしれないけど。

それにしたって、これは想定外だよ。まさかこんなことになるとは思ってなかった。

仕入れた材料、大量に残って腐らせることになったらどうしよう、と心配していたくらいなのに…。

何だって、いきなりこんなことに。

「…はー…疲れた…」

「死ぬかと思った…」

俺と同じく、店を手伝ってくれていたクラスメイト達が。

どっと疲れたような顔をして、お客さんが帰った後の教室に座り込んでいた。

「皆…お疲れさん」

本当、よくやってくれたよ。

俺が新校舎に行ってる間も、店を何とか回してくれてありがとうな。

お陰で助かったよ。

「あー!マジ死ぬかと思ったー!」

雛堂は、凝り固まった肩をぐるぐる回しながら、大声で言った。

「マジもう無理。倒れそう」

俺はキッチンにいたから、客席…ホールの様子はほとんど見ていないけども。

ホールも大変だったろうな。注文聞いたり、お冷ややメニューを運んだり、お会計をしたり。

目が回るほどの忙しさだったのは、言うまでもない。

…けども。

疲労のあまり座り込む前に、ここで、ずっと疑問だったことを質問したい。

「なぁ…乙無」

「何ですか?」

皆が疲労困憊している中、乙無だけは汗のひと粒もかかず、元気そのもの。

今も、山のように溜まった洗い物を片付けてくれている。

あんたの体力は底無しか?

「一体どういうことだよ?…何があったんだ?」

「何がですか?」

「いや、だから…。何でいきなり、あんなにたくさん客が来たんだ…?」

あまりに暇だから、新校舎の様子でも見に行こう、と言って出掛けて。

戻ってきてみたら、これだろ?

そりゃ度肝を抜かれるってもんだ。

…そういや、通りすがりのお客さんが、元生徒会長がどう、とか言っていたが…。

あれは何のことだったんだ…?

「あぁ…。僕達も驚いたんですよ。悠理さんと大也さんが新校舎に行って、一時間くらいは暇だったんですけど…」

「…けど?」

「突然お客さんが入ってきて、そこから雪崩のように増えました」

俺達がメイドカフェで揉めてる間に、そんなことが…。
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