アンハッピー・ウエディング〜後編〜
秋惜しむ頃の章2
衝撃の新事実。

寿々花さん、10月末から修学旅行だった。

…いや、衝撃って程でもないか…。

でも、初耳だぞ。

そういうことはもっと早く…あ、いや。待てよ?

そういや、昼間図書室で小花衣先輩に会った時、そんな感じのこと言ってたっけ?

旅行じゃなかったら、自分もハロウィンパーティーにお呼ばれしたいわ。とか何とか。

あれってそういうことだったのか。

…つーか寿々花さん、修学旅行の日程くらい覚えてろよ。

普通忘れないだろ。修学旅行なんて、学生生活において一大イベントじゃないか。

しかも、あろうことかうちの寿々花さんは。

「ハロウィンパーティーしたかった…」

「…」

修学旅行より、我が家でのハロウィンパーティーの方に未練があるらしい。

逆だろ。そこは素直に修学旅行を楽しめよ。

…しかし、修学旅行ね。

そういえば聖青薔薇学園では、二年生の秋に修学旅行に行く、って学校パンフに載ってたな。

ってことは、来年の今頃は、俺も修学旅行の準備をしてんのかな。

まだまだ先の話のような気がするな。

「そんな落ち込まなくても…」

「…そうだ。修学旅行はお腹痛くなったって言い訳して休もう。その間にハロウィンを、」

「こら。悪いことを考えるんじゃない」

仮病で修学旅行を休むとは。勿体無いだろ。

しかも、動機がハロウィンパーティーの為。

ハロウィンは来年も再来年もあるが、修学旅行は今回一回こっきりなんだぞ。

さすがに優先度が違うよ。

「…やっぱり行かなきゃ駄目?」

「駄目だろ…」

「…そっかー…」

しょぼーん、と落ち込む寿々花さん。

可哀想だけど、こればかりはどうにも…。

…うーん。でも、このままじゃ純粋に修学旅行を楽しめないよなぁ。

だったら…。

「じゃあ、ハロウィンパーティーは修学旅行から帰ってきてからやろうぜ」

と、俺は提案した。

「…ふぇ?」

きょとん、と首を傾げる寿々花さん。

思ってもみなかった、って顔だな。

「寿々花さんが修学旅行から帰ってきたら、改めてハロウィンパーティーをやろう。雛堂と乙無にも頼んでおくから」

事情を話せば、多分「良いよ」って言ってくれるだろう。

ハロウィンパーティーを行うことが重要なのであって、この際、正確な日付は後回しで良い。

数日ズレて11月になっても、ハロウィンってことで良いじゃん。

そこは臨機応変に行こうぜ。

「…良いの?帰ってからだと、もう11月になっちゃうよ」

「別に良いよ。そりゃあ、ハロウィン当日に集まれたら、それに越したことはないけど…。でも、必ずしもハロウィン当日じゃなきゃいけないって理由はないし」

事情が事情だからな。やむを得ないだろう。今回ばかりは。

雛堂達のことは、俺が説得してみせるよ。
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