アンハッピー・ウエディング〜後編〜
約束通り、オムライスに日の丸国旗を立てて、寿々花さんに出してあげたところ。

「わーい、オムライスだー。やったー」

それはそれは、嬉しそうに頬張っていた。

お子様ランチで喜ぶお嬢様…。分かりやすいなぁ…。

久し振りに二人分夕食作ってさ。何と言うか。

自分の分だけだとどうでも良いけど、寿々花さんの分も作ると思ったら。

途端に、「よし、作るか!」ってやる気になるんだから、不思議だよな。

「もぐもぐ。美味しい。もぐもぐ」

「おいおい…。あんまりがっつくなよ」

喜んで食べてくれるのは嬉しいけど、噎せるなよ。

「だって、ずっとイタリア料理ばっかりだったから…」

口の周りにケチャップをくっつけて、寿々花さんが言った。

「美味しかっただろ?イタリア料理」

「美味しいけど、でも悠理君のご飯ほどじゃないもん」

ありがとうな。

でも、そんなこと言ったら、イタリア料理に大変失礼。

どんなに豪華な旅行も、本場のイタリアンも…ケチャップライスのオムライスには及ばないということらしい。

特大のオムライスを、寿々花さんはぺろっとあっという間に平らげてしまった。

美味しいと言ってくれたのは、あながちお世辞ではなかったらしい。

「はー、美味しかった…。…けど、お腹いっぱいになっちゃった」

「あ、ごめん…」

つい、調子に乗って作り過ぎた自覚はある。

「ううん、平気。美味しかったー」

「…そういや寿々花さん、時差ボケとか大丈夫なのか?飛行機酔いとか…」

「うん、平気。悠理君の顔見たら元気になった」

それは虚勢だ。

ちゃんと休めよ。明日は日曜日だし。

「荷物の片付けは明日にして、今日は早めに休めよ」

「でも、悠理君に早くお土産渡したい。あとね、話したいこともいっぱい…」

と、言いながらも。

食べたらすぐ眠たくなったのか、半分船を漕ぎ始めている。

現金な奴。

「うー。まだ眠くなっちゃ駄目なのに。折角帰ってきたんだから、悠理君に…」

「はいはい、分かった分かった。明日ゆっくり聞くから」

「明日じゃ駄目なんだよぅ…。鮮度が…お土産話の…鮮度が落ちちゃう…」

「…一晩くらい大丈夫だって」

お土産話の鮮度って何だよ。

一晩経ってもピチピチだよ。大丈夫だよ。

そんな船漕ぎながら旅行の思い出話をされても、全然頭に入ってこないから。 

「ほら。部屋に行って寝てくれよ」 

「むにゃむにゃ…。やだ、まだ起きて…。…zzz…」

「…寝るのはっや…」

よっぽど疲れてたんだな。

無理もないか。一週間海外旅行で、半日飛行機に乗って帰ってくれば、誰だって疲れるよ。

無事に家に辿り着いて、久し振りに自宅で風呂に入って…特大のオムライスも食べて。

ホッとしたんだろうな。きっと。

…ってか、寝るのは良いけど、ここで寝落ちするのかよ。

自分の部屋で寝てくれよ…。どうしたら良いんだ。こんなところで…。

「…仕方ない。運ぶか…」

寝落ちした寿々花さんを背負って、俺は寿々花さんの部屋に連れて行った。

優しくお姫様抱っこして…なんて、そんな気遣いを俺に期待するなよ。

まぁまぁ乱暴に運んだはずなのだが、ぐっすり眠っていて起きなかった。

よっぽど疲れてるんだろう。無理もない。

無事に帰ってきたんだから、しばらくは何も考えずにゆっくりと。

「…おやすみ、寿々花さん」

「…zzz…」

呑気そうな寝顔を見下ろして、俺は小さくそう呟いた。
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