アンハッピー・ウエディング〜後編〜
結局寿々花さんが起きてきたのは、午後2時半頃だった。

リビングでゆっくりスマホを弄っていたら、突然、階段の方からドタドタ音がしたから。

あー、起きたんだなと思った。

すると、寿々花さんが慌ただしくリビングにやって来た。

「悠理君っ…」

「おー…。おはよう」

ガッツリ午後だけどな。もう。

「大変だっ…。悠理君、大変だよ」

「何が?」

そんなに焦った顔をしてどうした。

「昨日、悠理君のオムライスを食べて…ちょっと居眠りしようと思ったら…起きたら…もうお昼を過ぎてる」

「…」

「これってもしかして…タイムスリップ…!?」

「…大丈夫だ。ただの時差ボケだよ」

タイムスリップじゃないから。あんた、普通にぐーすか寝てただけだから。

「折角の日曜日なのに…もう半分以上過ぎちゃってる…」

しょぼーん、とする寿々花さん。

休みの日ってついつい寝坊してしまうけど、その分ちょっと損をしたような気分になる。あるあるだよな。

「それに、折角帰ってきたのに…久し振りに悠理君と一緒に過ごせると思ったのにー…」

「まぁまぁ…。日曜なら来週もあるし、明日からもずっと一緒なんだから、別に焦る必要はないだろ?」

「…そうかな?」

「そうだよ」

もう旅行は終わったんだから。今日からはまた、いつもの日常だよ。

俺は何処にも行かないし、寿々花さんも何処にも行かない。

嫌でも毎日一緒に暮らして、毎日顔を合わせることになるから。

「そっか…。そうだよね、えへへ…。何だか嬉しいね」

「…何が…?」

「それにね、寝てる間に夢の中でもね、悠理君に会ってたんだよ。何だか得しちゃった気分だ」

知ってる。
 
思いっきり、寝言で俺のこと呼んでたからな。

「…海水浴の夢だろ?」

「え。何で知ってるの?…そうだよ。悠理君と一緒に、ティラミスの海に行く夢を見たんだー」

やっぱりそうだったのか。

相変わらず、ファンタジーな夢を見てんなぁ…。

「水着着ないと駄目だよって言ったんだけど、悠理君、そのまま飛び込んじゃったんだー」

何やってんの?俺。

海水浴なら水着くらい着ろ。つーか、そもそもティラミスの海に飛び込むな。

「それ、俺溺れてなかった?」

「うん、溺れてた」

そりゃどうだ。

「助けてあげようと思って、チョコドーナツの浮き輪を投げてあげたんだー」

「そうか…。そりゃ世話になったな…」

「えへへー。どういたしまして」

夢の中に出てくる自分の姿は、その人が頭の中で自分をどう思ってるかを映す鏡のようなものだと聞いたことがある。

ということは、俺は寿々花さんの中で、ティラミスの海に飛び込んで溺れるような奴、という認識?で合ってる?

…あんた、マジで俺を何だと思ってるんだ?

…返事が恐ろしいから、聞かないでおこうっと。
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