アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それはそれとして。

「旅行の荷物、今日中に片付けるだろ?手伝おうか?」

「あ、そうだったー。悠理君にお土産買ってきてるんだよ。いっぱい」

目をキラキラとさせて、寿々花さんがそう言った。

そりゃどうも。

「お土産見る?見たい?見ても良いよー」

「はいはい。見たい見たい」

「あのね、あっちこっち観光して、お土産屋さんにいっぱい行ってね、たくさんお土産が売ってて」

「うんうん」

「どれも面白いから、どれも買いたくなったんだけど、買い過ぎたらスーツケースに入らないでしょ?だから全部は買えなくて、悠理君が喜んでくれそうなお土産をね、いっぱいいっぱい…」

「分かった分かった。分かったからちょっと落ち着け。な?」

お母さんに遠足の報告をする幼稚園児かよ。あんたは。

いくらでも聞いてやるから、ちょっと落ち着いて、順序立てて喋ってくれよ。

「えっとね、色々買ってきたんだけど…まず、これ」

と言って。

寿々花さんは、早速一個目のお土産を持ってきた。

妙に巨大な包み紙である。

何だあれ?

イタリア土産って言うから、てっきりパスタとか…チョコレートかなーと思っていたのだが。

「…何?それ」

「あのね、抱き枕。ピサの斜塔の抱き枕だよー」

超リアルなピサの斜塔がプリントされた、巨大な抱き枕だった。

…成程。そう来たか。

まぁ、寿々花さんはそういう人だよな。

相変わらずブレないようで、むしろ安心したよ。

何が嬉しくて、ピサの斜塔に抱きついて眠らなきゃならないんだ?

「色違いで二つ買ってきたんだよ。悠理君のが赤で、私のが青」

まさかのペアルック。

つーか、何で俺が赤?普通女性が赤で、男は青じゃね?

いや、その考えはもう古いのかもしれない。時代の最先端はジェンダーレスである。

「はい、悠理君。この抱き枕、私だと思って大事にしてね。ぎゅって抱っこして寝たらきっと気持ち良いよ」

「あ、ありがとう…?」

どんなに寝心地が良くても、これはどう見てもピサの斜塔だよ。

それ以外の何物でもない。

…いや、良いんだ。文句は言うまい。

俺は心の中で、必死に自分にそう言い聞かせた。

良いじゃないか、抱き枕。しかもピサの斜塔抱き枕だぞ?

こんな珍妙な、いや、こんな珍しいお土産は、現地でしか買えないぞ。…多分。

外国産のインスタントラーメンを大量購入してきた訳じゃないんだから。あれに比べれば全然OK。

「それと、こっちも悠理君に」

ピサの斜塔抱き枕のみならず、他にもお土産があった。

こ、今度は何だ?

「はい、あげるー」

「ど…どうも」

透明なビニール袋に包まれたお土産を開けて、出てきたのは。

所謂、ご当地Tシャツって奴。

前面にでっかいピザの絵と、「I LOVE PIZZA」の文字が書かれたTシャツだった。

…成程。ツッコミどころ満載だな。
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