アンハッピー・ウエディング〜後編〜
ご当地Tシャツは定番のお土産だけどさ。

何処で着るんだ?これ。

こんなもの日本で着て歩いてたら、ただの変な人、いや、ただのピザ好きの変な人じゃん。

つーか、イタリア語じゃねーのかよ。

大体俺、そんなにピザが好きな訳じゃ、まぁ嫌いでもないけど、ピザ好きをTシャツに公言して歩くほどではない。

かと言って、これも貴重なイタリア土産だと思うと…捨てるに捨てられず。

いつまでも永久に、タンスの中に大事にしまわれている可能性大。

しかも。

「私もお揃いなんだよー」

またしてもペアルック。

俺が赤で、寿々花さんが青のTシャツだった。そうか…。

そういうお揃いは…ちょっとどうかと思うぞ。

「どう?嬉しい?」

「う、うん…。まぁ、良いんじゃねぇの…?」

「良かったー」

そう、良いじゃないか別に。

外国産のインスタントラーメンを大量購入した訳じゃないんだから、この程度は全然許容範囲。

セーフだよ、セーフ。

抱き枕とTシャツくらいなら、可愛いもんだ。

このお土産を、俺の為にと思って一生懸命選んでくれている、寿々花さんの姿を想像してみろ。

余計可愛らしいじゃないか。なぁ?

と、必死に自分にそう言い聞かせていると。

「それから次は…これだよ」

まだあるのか?

今度は、またやたらめったらデカい、縦長の箱。

…何だそれ?何だか細長いけど…また抱き枕か?

「…それは何なんだ?」

「えっとね、イタリアで有名な調味料なんだって。悠理君は料理が得意だから、現地のお店の人に聞いてみたんだ。お料理が得意な人にあげるお土産は、どれが良いですかーって」

ほう。自分で選ばず、店員さんに尋ねたのか。

偉いぞ。

しかも、それ…イタリアのお土産屋さんってことは…。

「日本語な訳ないよな?英語で聞いたのか?それとも…」

「ふぇ?イタリア語で聞いたよ。それくらいの会話なら出来るから」

だってよ。聞いたか?この寿々花さんのポテンシャルの高さ。

俺みたいな凡人高校生じゃ、イタリア語の挨拶さえ覚束ないのに。

イタリア語で店員さんに普通に話しかけて、会話が出来るとは。

こんな頭の良い人が、夢の中でティラミスの海を泳いでるんだもんな。

人は見た目によらない、っていうのはこのことを言うんだろうな。

「悠理君は三つ星レストランのシェフより料理が上手なんだよ、って店員さんに自慢してきちゃった」

「話盛り過ぎだっての…」

「そうしたら、色んなお土産を勧めてくれたよ。物凄く希少なオリーブオイルとか、おっきい岩塩とか…」

「ほらぁ…。寿々花さんが話を盛るから、いかにもプロっぽい調味料を勧められてんじゃん」

そんなお高いオリーブオイルや、大きな岩塩なんてもらったって。

家庭料理じゃ持て余すっての。

何処ぞの高級ホテルのレストランじゃないんだから。

「まさか、そのオリーブオイルを買ってきたんじゃないよな?」

「うん。違うよー」

良かった。助かった。

さすがに寿々花さんも、俺みたいな凡人主夫に、そのような本格イタリアンの調味料は荷が重いと判断、

「代わりに、これ買ってきたんだー。はい」

と、寿々花さんは縦長の箱を差し出してきた。
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