アンハッピー・ウエディング〜後編〜
さて、気を取り直して。

「そろそろケーキが焼き上がったから、持ってきて…」

「おぉっと、待った。その前にやるべきことがあるだろ?」

と、雛堂。

…やるべきこと?

「…って、何?」

「とりっくおあとりーと?とりっくおあとりーとするの?」

うっきうきの寿々花さんである。

え?それマジでやんの?

「勿論、トリックオアトリートはするぜ?その前に、ハロウィンパーティーと言えばやることがある」  
 
だから、それは何だよ。

雛堂は、パンパンのボストンバッグを持ってきた。

そのボストンバッグ、中身何なんだ?

「ハロウィンと言えば…仮装パーティーだろ?」

にやり。

…は?仮装?

そういや、そんなこと言ってたっけ…。

「仮装グッズ、人数分用意してきたからな」

「わーい。楽しそう」

寿々花さん、ノリノリ。

仮装ねぇ…。気乗りしないけど、まぁ良いか。

寿々花さん、楽しそうだし。

仮装って言っても多分、うさぎの耳のカチューシャとか、マジシャンみたいな仮面をつけたり、その程度だろう。

「悠理君、仮装しよ。かそうー」

「はいはい。分かった分かった」

と、気軽に返事をした瞬間。

雛堂が、にやりと笑った。

「…言ったな?」

「え?」

「仮装。するって言ったな?有言実行してもらうぞ」

「え、いや。ちょ、それどういう意味、」

百聞は一見に如かず、とばかりに。

雛堂はボストンバッグを開き、中身を見せた。

思わず、絶句してしまった。

「魔女、赤ずきん、ドラキュラ、ミイラ男の四種類があるぞ」

謎のドヤ顔。

何考えてるんだ、雛堂の奴。

あろうことか雛堂のボストンバッグから出てきたのは、女モノの仮装衣装だった。

ドラキュラとミイラ男はセーフ。

魔女と赤ずきんは、完全にアウトである。

「雛堂。あんた、なんか誤解してるのかもしれないけど…。このメンバーの中で、女なのは寿々花さんだけだぞ」

何故、女モノの衣装を二枚も持ってくるのか。

あ、そうか。雛堂自身が着たいってことね。それなら納得。

それとも、着たい人が自由に着るスタイル?着たくない人は着なくても良いよ、みたいな。

「え?知ってるけど」

「じゃあ何で、魔女と赤ずきんの衣装を持ってきたんだよ?」

「いやー、悠理兄さんに似合うかなーって」

ぶっ飛ばすぞ。

誰が何に似合うって?

…それなのに。

「本当だー。可愛い衣装、これ、悠理君に似合いそうだよ」

魔女の衣装を見て、寿々花さんが目をキラキラさせて言った。

あんたも何を言ってんだよ。

能天気にも程がある。

この場で良識があるのは、唯一乙無だけかもしれない。

「乙無…。この馬鹿共を止めてくれ」

「さぁ。止めて止まるものなら止めますけど。果たして、止めたくらいで止まりますかね?」

「…」

…成程、無理そうな気がする。
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