アンハッピー・ウエディング〜後編〜
すったもんだの応酬の後。

俺の、必死の抵抗も虚しく。

「おぉー!さすが悠理兄さん。女装コンテストの準優勝者。貫禄が違うな!」

殴るぞ、雛堂。

俺に顔面をぶっ飛ばされたくなかったら、今すぐその口を閉じることだな。

「大丈夫。よく似合ってますよ、悠理さん」

「うるせぇ、褒めるな」

何も大丈夫じゃねーし、褒められても嬉しくねーし。

「あのね、あのね、悠理君」

「…何だよ」

寿々花さんは、情けない俺の姿を見て溜め息をつく代わりに。

目をキラキラさせて、興奮したように俺を見つめていた。

「すっごく可愛いよ。赤ずきんちゃん」

うん、ありがとうな。

全然嬉しくないから、やっぱり腹いせに雛堂をぶん殴ろうかな。

拝啓、ご先祖様。

女装コンテストの醜態のみならず、またしてもこのような情けない姿を晒してしまったことを、心からお詫びしたく、

「折角だし、記念写真撮ろうぜ。いえーい」

「いえーいじゃねぇよ、馬鹿。写真を撮るな!」

「その写真、私も欲しい。額縁に入れて玄関に飾っ、」

「ふざけんな。絶対駄目だからな!」

「…やれやれ。たかだか仮装くらいで大騒ぎですね」

呆れた、みたいに溜め息ついてんじゃねぇ。乙無。

あんたにとっては「たかだか仮装」かもしれないが、俺にとっては人間としての尊厳が懸かってるんだよ。

大事なことだよ。当たり前だろ。

あぁ、もう泣きたい。

寿々花さんが、俺の赤ずきんのスカートをちょいちょい、と引っ張ってきた。

「ねぇねぇ、悠理君。それよりも」

「それよりって何だよ。今、ズタボロにされた俺の尊厳以上に大切なことがあるのか?」

「ケーキ食べたい。悠理君のハロウィンケーキ」

…成程。そういえば、仮装の騒ぎで忘れるところだった。

それも大切だな。…確かに。

「…分かったよ。今持ってくるから…ちょっと待っててくれ」

「うん。悠理君のハロウィンケーキ〜♪」

…呑気に鼻歌歌いやがった。

あんたが楽しそうで何よりだよ。畜生。
< 342 / 645 >

この作品をシェア

pagetop