アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「どうしよう…これ…」

「…?悠理君、どうしたの?」

クリスマスプレゼントの前で腕組みする俺に、寿々花さんが声をかけてきたが。

俺は、全く気づいていなかった。

「やっぱり寝てる間に…。でもそれじゃあ夜這いに…」

「よばい…。夜這い…?悠理君、誰か夜這いするの?」

「あぁ…。ちょっと…。上手く行くか悩んでてな…」

「そっかー。悠理君は優しいし格好良いから大丈夫だよ。きっと成功すると思うよ」

「そうか?それはありがとう」

ちょっと自信が出…。…ん?

「…ちなみに、誰の部屋に夜這いしに行くの?」

「誰って…。そりゃ寿々花さんだろ」

「え。私?私かー。…初めてだから緊張するけど、でも悠理君なら良いかな。よし、うん」

その時俺は、初めて自分の背後に寿々花さんがいることに気づいた。

おっそ。

びっくりして振り向くと、そこには両手を広げた寿々花さんがいた。

「どうぞ、いつでもいらっしゃい」

…何処に?

…ってか俺、今何を言ってたんだ?

自分が何を口走ったのか、朧気ながらに覚えている…ような、覚えてないような…。

…あれ?俺、もしかしてとんでもないこと言ってなかった?

背筋に冷たい汗が流れたような気がした。

「いつでも良いよ、はい」

何か覚悟を決めたような顔で、両腕を広げる寿々花さん。

ちょっと待て。何が良いんだ?

…って言うか。

「…何でここにいるんだっ!?」

さっきまで、部屋に一人だったはずなのに。

何故ここに寿々花さんがいるのか。

「え?入るねって言ったのに、悠理君がタンスの前でぶつぶつ言ってたから…」

「そ…そういう時はノックをしてから入ってくれよ!お、俺…今、何言ってた?なんかとんでもないこと言ってなかったか!?」

何であんたという人は、ノックしてから人の部屋に入るということを学習してくれないんだよ。

お陰で俺は、何かとんでもないことを…取り返しのつかないことを言っ、

「ふぇ?とんでもないこと…?何も言ってないよ」

とのこと。

ホッ…。良かった、助かった。

なんだ。口に出てしまったかと思っていたが、全部心の中の独り言だったか。

安心し、

「大丈夫。私の部屋に夜這いしに来るって言ってただけだよ」

「やっぱり言ってんじゃねぇかよっ…!」

だよな?やっぱりそうだよな?

都合良く言ってないことになってないかと思ったけど、やっぱり無理だよな?

何が大丈夫なんだよ。あんた、それを聞いてもっと動揺しないのか。

我ながら、「痴漢!」って叫んでぶん殴られてても、文句は言えなかったぞ。

「ちょっと待ってくれ、寿々花さん。これは誤解。誤解なんだ」

「大丈夫だよ、悠理君」

何が大丈夫なんだよ。何も大丈夫じゃないから言ってるんだっての。

「そんなに緊張しなくても。私も初めてだから」

「何の話をしてるんだよ、あんたは…!」

「誰にでも初めてはあるから。一緒に乗り越えよう」

「本当に何を言ってるんだよ!?」

ちょっと。話が。話が全年齢版じゃなくなっていく。

お互い落ち着いて、頭をクールにしよう。な?
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