アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「すぅー…。はー…」

とにかく一旦落ち着こうと、俺は大きく深呼吸した。

はぁ。

「悠理君、深呼吸してる…。…はっ!もしかして夜這いじゃなくて、今ここですぐ…!?」

「ぶはっ」

おい待て。どういう勘違いだ。

良いからあんたはいい加減、夜這いの話から離れろ。

…って、元凶は他ならぬ俺なんだけどな。

「ごめん、寿々花さん。俺が悪かった。話を聞いてくれ。これには深い事情がある」

「…浮気した人の言い訳みたい…」

「頼むから、頼むから真面目に聞いてくれ…!」

「うん、うん。分かった。聞くよー」

本当かよ。全然真面目に聞く気ないだろ。

違うんだって、本当に。これには深い事情が。

クリスマスプレゼントをいつ渡すかという話が、何故こんなに拗れたことに。

すると。

「…?悠理君、それなーに?」

「え、あ、ちょ」

寿々花さんは、俺の前にある紙袋に…。

そう、件のクリスマスプレゼントに気がついた。

慌てて止める前に、寿々花さんはその紙袋を手に掴んでいた。

「…?誰かからのプレゼント?」

紙袋はクリスマス仕様にラッピングされているので、一目瞭然である。

あぁ…ヤバいヤバい。

「ち、ちが…。え、えぇっと…それは…」

「悠理君、物凄く慌ててる…。もしかして、何か疚しいことを隠してるんじゃ…?」

ぶつぶつ、と寿々花さんは何やら小声で呟いていた。

おい。はっきり聞こえないけど、何かまた、とんでもなく俺に不利なこと考えてないか?

「成程、それでさっきから様子が変になって…。違う女の子から渡されたのかな…?…そっか。それはちょっと寂しい…けど、でも、広い心で受け入れてあげるべきだよね。うん、そっか。よし」

「なぁ。何言ってんの?絶対ろくなことじゃないよな?」

「ううん、大丈夫」

寿々花さんは、くるりとこちらを振り向いた。

「悠理君がよその女の子からプレゼントをもらっても、私は怒らないから。大丈夫、男の子なら誰でも魔が差すことがあっ、」

「ほら!やっぱりめちゃくちゃ誤解してんじゃん…!」

案の定。とんでもない誤解。

本当に待ってくれ。落ち着いて、落ち着いて俺の話を聞いてくれ。

「違うんだよ。女じゃないんだって!」

「えっ、男の子…?」

「何でそうなるんだよ!」

女じゃないって意味じゃないから!あんたの中で、俺の性癖はどういう認識なんだ?

それならまだ、女だと誤解された方がマシだよ。

それも大問題だけどな!

「そういえば、悠理君いつも男の子の友達と一緒にいるし…。はっ、男子校に入学したのは、まさかその為…」

「だからっ…!ち、が、う、んだよ!」

寿々花さんに縋り付くようにして弁明する俺は、最早半泣きだった。
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