アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「何だろう?中、開けても良い?」

「あ、うん…」

今更だけど、プレゼントを目の前で開けられると、緊張するよな。

大抵の人は、「何これ要らない」とか「センス無いな」とか思っても、嘘でも「嬉しいよありがとう」と言ってくれるものだが。

寿々花さんは、良くも悪くも素直な人だからな。

「要らない」と思ったら、隠そうとしても、嫌でも顔に出るだろ。

別に寿々花さんは悪くねぇよ。

俺のセンスが悪いってだけだ。

「わーい。何かなー」

「あんまり期待しないでくれよ…」

「悠理君からのプレゼントなら、そこら辺の石ころでも嬉しいよ?」

「…それ、逆に嬉しくないからな…?」

遠回しに、遠回しに「あんたセンス無いよ」って言ってるようなものじゃね?

悪意はないものだと思おう。寿々花さんだからな。

俺の内心の躊躇いをよそに、寿々花さんは包装紙を遠慮なく破いた。

中に入っていたのは、キラキラと洒落た飾りのついた小さな箱…。

「これ…なぁに?宝箱?」

「え、えっと…」

「あれ?下にゼンマイがついてる…。これ、回すとどうなるの?」

「…回してごらん、試しに」

「うん、分かったー」

小さな箱に、小さなゼンマイ。

もうこれだけで、答えを出してるようなものだが…。

何度かゼンマイを巻き、箱をぱかっと開けると。

「わぁ…綺麗」

お姫様みたいなお城と、小さな天使をモチーフにした、クリスマスっぽいお洒落なデザイン。

そして、ゆったりと流れるクリスマスソング。

そう、オルゴールである。

…改めて見ると、我ながら小洒落たプレゼントを選んだもんだ。

お店で見ると、どれもこれもお洒落に見えるんだよ。

「どうかな…。雑貨屋で見つけて…。キラキラしてて、寿々花さんが好きそうかなと思って」

「凄いね、これ。音が鳴ってる。凄く綺麗。わー。まだ鳴ってるよ。凄い。これどうなってるの?悠理君が歌ってるんじゃないよね?」

「歌ってないよ…」

「凄い凄い。電池?これ電池で動いてるの?不思議。音が鳴る箱だー。凄いね、綺麗だねこれ。わー」

…よく分からないが、寿々花さん、いつになく大興奮。

初めて、シャボン玉の玩具で遊んだ時を彷彿とさせる興奮ぶりである。

何なら、さっきのアイスクリーム屋さんより喜んでね?

微妙かなと思ったんだけど…全然そんなことなかったみたいだ。

むしろ、めっちゃ喜んでる。

「…あ、止まっちゃった」

ゆったりと流れていた音が、少しずつ途切れ途切れになって、やがて沈黙した。

「…終わっちゃった…」

「…」

しょぼーん、と落ち込む寿々花さん。

…えーっと。

…寿々花さん、オルゴール知らないのか?

「…もう一回回したら、もう一回流れるぞ」

「えっ?」

「ゼンマイ。回してみ」

「う、うん」

寿々花さんはもう一度、くるくるとゼンマイを回した。

すると、オルゴールはまた、息を吹き返したように音が流れ始めた。

この時の、寿々花さんの蘇ったような顔と言ったら。

「…凄い。また流れ出した…!」

…いや、普通じゃね?

一回こっきりのオルゴールなんて、聞いたことねぇよ。

本当に寿々花さん…オルゴールを知らないんだな。

学校1ってくらい頭良い癖に、普通一般常識で知ってそうなことは、意外と抜けてたりするんだよな。

相変わらず、分かんない人だよ。
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