アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それなのに寿々花さんは、俺の気も知らず、けろっとした顔で。

「プレゼント、開けても良い?」

と、聞いてきた。

「…良いよ…どうぞ」

「やったー」

もうどうでも良いや。野となれ山となれ。

寿々花さんは俺の目の前で、べりべりと包装紙を破いていた。

中から出てきたのは。

「わー。わー、凄い凄い」

寿々花さん、早速大興奮。

俺が選んだのは、女の子向けの、玩具の…。

「アイスクリーム屋さんだ」

「…あぁ、そうだよ」

おままごとに使う、玩具のアイスクリームショップである。

玩具ながら、バニラ、チョコ、ストロベリー、抹茶その他、アイスクリームの種類は無駄に豊富である。

「寿々花さん、アイスクリーム好きだからと思って…」

「うん。悠理君、覚えててくれたんだね」

そりゃ、スイーツビュッフェでもアイスクリーム山盛りに取ってきてたもんな。

家でも、寒くなったのに我が家の冷凍庫には、未だにアイスクリームが欠かさず入ってるよ。

この寒い時期に、って思うだろう?

逆なんだよ。

むしろ寒いこそ、アイスクリームが食べたくなることって、ない?

分かる?この気持ち。

真夏に、突然無性におでん欲しくなるあの現象。あれと同じ。

10人に1人くらいは共感してもらえると思う。

「…どう、だ?喜んでもらえたか?」

「うん。凄く嬉しいよ」

満面の笑みで、玩具のアイスクリーム屋さんの箱を抱き締める寿々花さん。

本当に嬉しそうだ。

良かった。

通りすがりの女児にロリコン疑惑を向けられるという、大きな犠牲を払って買ってきたものだからな。

これでもし「要らない」なんて言われたら、俺の苦労は何だったんだって話。

「悠理君、一緒に遊ぼうね。アイスクリーム屋さんごっこ、一緒にしようね」

「あぁ…良いよ」

「やったー」

アイスクリーム屋さんごっこをするくらい、玩具コーナーに入ることに比べたら何でもない。

良いよ。今日は既に、今年どころか来年分の恥をかいたからな。

今更、アイスクリーム屋さんごっこくらいで恥ずかしいものか。

いくらでも付き合ってやるよ。

良かった。喜んでもらえたようで…。

「…あれ?もう一つある」

寿々花さんは、紙袋の中身を見て声を上げた。

…あ、そうだった。

「もう一つあるよ。…これは何?」

「それは…。…それもプレゼントだよ」

「ふぇっ。二つもあるの?…二つももらって良いの?」

「どうぞ」

如何せん、玩具コーナーではろくに吟味して選んでる余裕がなかったからな。

ロリコン疑惑から逃げるようにそそくさと、手近にある玩具を掴んで買った、みたいな…。

これじゃあ味気ないと思って、雛堂とクリスマスフラペチーノ飲んだ後。

ふらっと寄った雑貨屋さんで、もう一つ、寿々花さんへのクリスマスプレゼントを購入したのである。

…こっちは、正直あんまり自信ない。

アイスクリーム屋さんほどは、喜んでもらえないような気がする。
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