アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「リアルな話…。一体いくらくらいかかるんだろうな…?」

雛堂は、声を潜めるようにしてそう聞いてきた。

さぁ…。俺には全く検討もつかない。

昨日も、留学費用については一言も触れなかったし…。

留学の話が持ち上がったら、必ずネックになるであろう留学費用の問題は。

無月院家の生まれである寿々花さんには、考える必要のない問題だからである。

「留学する国にもよりますが、滞在費や航空券の費用、諸経費も諸々含めると…年間大体400〜500万といったところでしょうね」

博識な乙無が、ここでも持ち前の知識を披露してくれた。

目玉飛び出るかと思った。

「ほげーっ!400万!?ってことは…何万円だよ!?」

「…400万だろ?」

だが、そう言いたくなる気持ちは分かる。

我が家の食費何ヶ月分だ?

「準備の段階でも、あれやこれやとお金はかかるでしょうからね。まぁ、安くはないでしょうね」

「心配要らねぇよ…。生憎、金には全く困ってない人だから」

「あ、そうか。無月院の姉さんは、無月院家のお嬢さんなんだもんな…」

そうなんだよ。

これが普通の…庶民だったら、留学費用が高過ぎるから、という言い訳が出来るけど。

残念ながらと言うべきか、無月院家の寿々花さんには、留学費用などいくら高額だろうと問題にはならない。

…むしろ、留学すれば寿々花さんに箔がつくからと、喜んで留学費用を出してくれそうだ。

椿姫お嬢さんだって、それが分かってるから、寿々花さんにも留学を勧めてきたんだろうし…。

経済観念、どうなってんだよ。

「それで…?」

と、雛堂が恐る恐る聞いてきた。

…何だよ。それで、って。

「無月院の姉さんは…留学、マジで行くつもりなのか?」

「…」

多分この時の俺は、般若のような顔になっていたのだと思う。

「ひぇっ…。ご、ごめん…」

雛堂は慌てて質問を引っ込め、謝罪した。

何も雛堂が悪い訳じゃないんだから、雛堂を睨むのはお門違いなんだけどな。

「…まだ分からない。考えてるところだって」

俺は、昨日寿々花さんに聞いた通りのことを二人に答えた。
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