【短】「花火を背にした少女」
 花火の形なんて、まるで分からない。

 ただ輪郭のぼんやりとした光がイーゼルに置かれた白いキャンバスに映っているだけ。

 辺りの暗い床と対照的に。


 それだけで、目をうばわれた。




「…」


「どう、私の芸術は?」




 歌月理(うつり)がにんまりと笑う。

 いまの俺の駄作より、ずっとずっとよかった。




「…いい」


「でしょ!?私って風景写真も捨てたものじゃないかも!第2部は花火の写真撮るからさ、一緒に見ようよっ」


「いや…帰る」


「えーっ、なんで!?」




 そんなの、決まってる。




「絵が、描きたいから」


「!それじゃあ、止められないじゃん。…ね、見に行っちゃダメ?」


「腐れ縁とは言え…高校生にもなって男の家に泊まる気か?さっきもパンツ見えてたし」
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