【短】「花火を背にした少女」
「えっ!?」




 顔色なんて暗くて分からないけど、驚いた顔でスカートを押さえた様子を見れば分かる。

 声も上擦ってるし。


 俺はにやりと笑い返してやった。




「うそ。明日までに描き上がったら見せてやる」


「は~!?」




 怒ればいいのか、喜べばいいのか分からなくて、続きの言葉が出てこない。そんな感じ。


 この衝動のまま描いて、今まで通りの絵が出来上がるか分からない。

 だから、まだ見せてやらない。


 スランプってやつに陥ってたことを話さないのは…男のプライドだ。




「じゃ、俺帰るから。もうこんな時間に呼び出すなよ」




 歌月理(うつり)が言葉を探して目を泳がせているうちに、俺はとっとと真っ暗な部屋を出て、廊下の明るさに目を細めた。



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