妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
「あ、亜夢。おはよ」
「お、はよ……」

 呆気に取られる私をよそに、まるで何事も無いかのように挨拶をする百瀬くん。

「あの……」

 私が何を言いたいかが分かったらしい彼は、

「ああ、これ? ほら俺、身バレしたくないって話したでしょ? 職場では荒木田の人間だってバレないようにしてるからまあ、変装って感じかな? 出勤する時だけはスプレーで黒髪にしてる。眼鏡は伊達だしね」

 髪と眼鏡を指差して説明してくれる。

 確かに、これなら普段の百瀬くんとは別人に見えるから納得だ。

「そっか。何かあまりに別人に見えたから驚いちゃった」

 そう私が口にすると、鍵を閉めた百瀬くんはフッと口角を上げて悪戯っぽい笑みを浮かべながら近付いて来て、

「ふーん? もしかして、いつもと違う俺の姿にときめいたりしてくれてる?」

 私を玄関のドアに追い詰めて手を付くと、鼻先が触れるギリギリの距離まで顔を近付けて問い掛けてきた。

 百瀬くんのその言動に私の胸は高鳴り、頬は一気に熱を帯びていく。

 黒髪眼鏡でスーツ姿という、いつもと違う初めて見る百瀬くんに驚いたのは勿論だけど、ときめきもあったのは事実。

「……うん」

 小さい声で返した私に彼は、「そういう素直なとこ、可愛いよ」と言いながら、ちゅっと音を立てて軽く唇を重ね合わせてきた。

 こんな玄関先でキスなんてという恥ずかしさはあるものの、百瀬くんとのキスが嬉しいのと出掛ける前に会えた喜びの方が大きくて、すぐに唇を離してしまった彼に「……もう一度、して?」と強請ってしまう。

「そんな風にお願いされたら、キス以上の事、したくなっちゃうんだけど」
「――ッん……」

 百瀬くんは少し困ったような表情を浮かべると私の顎を掬い上げ、今度は強引に口付けてきた。
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