一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
「そんなもの売ってるんですか」
「違法だ。偽物も多い。が、本物を公共の場で使うとああやって大混乱だ」
「本当に大丈夫でしょうか」
「アルファと番になりたがっていたようだから、アルファに囲まれて本望なんじゃないか」
「さすがにその言い方はひどいと思います」
「君、彼女に嫌がらせされていたんじゃないのか」
 小手鞠さんは驚いたように私を見る。
「森下が調べて教えてくれた。ネットで一発だったらしい」
「そうですか……」
「そんな人まで心配するんだね。優しいな」
 私は首をふる。寝覚めが悪いのが嫌なだけだ。
 だけど小手鞠さんの私を見る目は慈愛に満ちていて、私の胸が高鳴る。
 ふいに、心臓が大きく脈打った。
「どうした?」
「なんかおかしいです」
 はあはあと息が荒くなる。体が熱くなる。脈が速い。
「この匂い」
 小手鞠さんが顔をしかめた。
「ヒートか?」
「私、ベータですから」
 そんなわけない、と思う。
「だが今、君からフェロモンが溢れている。薬を打ったばかりなのに、おかしくなりそうだ」
 小手鞠さんが苦しそうにネクタイを緩めた。
「フェロモンをぬったことで、本格的にオメガが発現したのか」
「そんなことって」
 頭がくらくらした。なんだか小手鞠さんに抱き着きたくなる。
「落ち着かせてやろうか」
 小手鞠さんの目がぎらついている。
 私は急に彼が怖くなった。
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