一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
「嫌……」
 鮫島さんの話したニュースを思い出す。落ち着かせてやる、と言って襲う男たち。
「遠慮するな」
 小手鞠さんは私の頭を抱き込み、キスをした。
 甘いしびれが走った。
 小手鞠さんの舌が侵入する。その柔らかな感触に、体の奥が熱くなる。
 おかしい、と自分でも思う。なのに、もっともっと、と彼に身を寄せる。
 頭に霞がかかったように、小手鞠さんのことしか考えられない。
 優しくかきまぜる彼の舌に、とろけたように動けなくなる。
 そうして、そのまま意識を失った。

「港についたぞ」
 声をかけられて、私はハッとした。
 周りを見回す。見慣れない部屋と、小手鞠さんの苦笑。
 さきほどまでの異常な感覚はなかった。
「悪いが、注射させてもらった」
 と、私の腕を示す。
「オメガ用の薬も持っていたんだ。役に立って良かった」
「なんでそれをあの子に打たなかったんですか?」
「必要ないからだ」
 鮫島さんを見捨てる発言に、私は顔をしかめた。
「わかってないな。彼女はベータだ」
「は!?」
 オメガやヒートのつらさをあれだけ語っていたのに。
「だからフェロモンを使ってアルファである俺をひきつけようとした。彼女が本当にオメガなら発情誘発剤を使っていたことだろう」
 発情誘発罪は発情不全の人に使われる。発情がちゃんとこないと不妊につながってしまうからだ。
「情報はいくらでも調べられる。他のオメガの苦労話を自分の話にして周りを信用させたんだろう」
 そんなことをする時間があるならもっと有益に使えばいいのに。
 でも。
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