一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
鍵を閉めて、ようやく彼は息をついた。
懐からケースを取り出し、中の注射を震える手で自分に打つ。
いけない薬をやっている人を見るようで、私はどきどきした。
「そんな目で見ないでくれ。これは医療機器メーカーとの共同開発の特殊な注射器で、薬は現在臨床試験中なんだ」
「社長自ら?」
「たまたまアルファだったからな」
「たまたまって」
臨床試験は本来は病院でやるものだろうし、被験者は適当に選ぶわけでもないだろうし。
「今はオメガのヒートを抑える薬が主流だろ? アルファの反応を抑える薬があれば、オメガもアルファももっと生きやすくなると思ったんだ。誰でも失敗なく打てる形状で、注射だから即効性もある」
だから森下さんがあんなに迷いなく打っていたのか、と納得した。
「そんなことより」
小手鞠さんは鋭く私を見た。
「なんて無茶をしたんだ」
声には怒りが含まれていて、私は首をすくめた。
「私ならベータだし」
「考えが甘い! ヒートに誘発されたアルファの暴走を甘く見過ぎだ! ニュースも見てるだろ! 噛まれるだけじゃすまないぞ!」
「それはオメガだからなんじゃ」
「ベータでも巻き込まれるぞ! 第一、君はオメガだ! 何回も言ってるだろう!」
「怒鳴らなくても」
私がつぶやくと、小手鞠さんはハッとして息を吐いた。
「すまない。興奮して」
「はい……」
「彼女はきっと大丈夫だから。座って」
小手鞠さんに言われて、私は居心地悪くソファに座った。
その隣に小手鞠さんが座る。
「手を見せて」
小手鞠さんは私の右手を掴んだ。割れた瓶とともに流れた液体の中に手をつっこんだので、ガラスで手を切っていた。
「傷は浅いな。ガラスも刺さってない」
小手鞠さんはハンカチでその手を縛ってくれた。その後、部屋にあったペットボトルの水を使い、ティッシュで私の首を何度も拭った。
「あの女、合成フェロモンを使ったな。ネットで買ったのか」
苦々しく小手鞠さんが吐き捨てる。
懐からケースを取り出し、中の注射を震える手で自分に打つ。
いけない薬をやっている人を見るようで、私はどきどきした。
「そんな目で見ないでくれ。これは医療機器メーカーとの共同開発の特殊な注射器で、薬は現在臨床試験中なんだ」
「社長自ら?」
「たまたまアルファだったからな」
「たまたまって」
臨床試験は本来は病院でやるものだろうし、被験者は適当に選ぶわけでもないだろうし。
「今はオメガのヒートを抑える薬が主流だろ? アルファの反応を抑える薬があれば、オメガもアルファももっと生きやすくなると思ったんだ。誰でも失敗なく打てる形状で、注射だから即効性もある」
だから森下さんがあんなに迷いなく打っていたのか、と納得した。
「そんなことより」
小手鞠さんは鋭く私を見た。
「なんて無茶をしたんだ」
声には怒りが含まれていて、私は首をすくめた。
「私ならベータだし」
「考えが甘い! ヒートに誘発されたアルファの暴走を甘く見過ぎだ! ニュースも見てるだろ! 噛まれるだけじゃすまないぞ!」
「それはオメガだからなんじゃ」
「ベータでも巻き込まれるぞ! 第一、君はオメガだ! 何回も言ってるだろう!」
「怒鳴らなくても」
私がつぶやくと、小手鞠さんはハッとして息を吐いた。
「すまない。興奮して」
「はい……」
「彼女はきっと大丈夫だから。座って」
小手鞠さんに言われて、私は居心地悪くソファに座った。
その隣に小手鞠さんが座る。
「手を見せて」
小手鞠さんは私の右手を掴んだ。割れた瓶とともに流れた液体の中に手をつっこんだので、ガラスで手を切っていた。
「傷は浅いな。ガラスも刺さってない」
小手鞠さんはハンカチでその手を縛ってくれた。その後、部屋にあったペットボトルの水を使い、ティッシュで私の首を何度も拭った。
「あの女、合成フェロモンを使ったな。ネットで買ったのか」
苦々しく小手鞠さんが吐き捨てる。