一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
 結ばれない人を好きになるなんて、さらに運がない、と思った。
今は真逆だ。彼に出会えてプロポーズまでされて、こんなに運のいい女はほかにいないのでは、と思う。
 あの日、もし運がよかったら。
 もし残業していたら。
 一つ違っただけで出会えなかったかもしれない。
 これを運命と呼ぶのだろうか。
「じゃあ、さっきの、もう一度言ってください」
「なんのことだ」
 私は小手鞠さんの顔を見た。ときに冷酷にもなるその目は、今は困惑の色を浮かべている。
 やっぱり森下さんに「阿呆」って言ってもらったほうが良い気がしてきた。小手鞠さんにではなく私に。
 だけど。
 胸が自然と高鳴る。
だけど、もし彼がまた言ってくれたら、今度は――。
 しばらく考えてから、ようやく小手鞠さんは言う。
「結婚してほしい」
「はい」
 私は即答した。
 彼の望む答えのはずなのに、小手鞠さんは首をかしげた。
「心変わりが早過ぎないか」
「嫌ならなかったことに」
「嫌なわけない」
 小手鞠さんは私を抱きしめた。
 彼の顔が近付く。
 私は目を閉じた。
 青空の下、色とりどりの花に囲まれて。
 アオノリュウゼツランに見守られ、唇が重なった。
 ゆるやかな風が私たちを包み、静かに通り過ぎていった。

 終
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