一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
「好きに決まってるじゃないか」
 驚いたような小手鞠さんの声に、私もまた驚いて彼を見た。急に鼓動が早くなる。
「お互いをよく知らないのに、好きとか……」
 自分だってすぐに好きになったくせに、棚上げだ。
「私がオメガじゃなかったら、きっと素通りでしたよね」
「好きになるきっかけがアルファとオメガだっただけだ。なんの問題がある。君は一目惚れを否定するタイプか」
 もはやどう答えていいのかわからない。心臓の音がうるさくて、考えがまとまらない。
「急に好きって言われても」
「最初から俺は言っているはずだ」
「言ってません」
「運命の番だと」
「それは言ってました」
「好きと同義だろう。運命の番ならわかるはずだ」
「そんな説は聞いたことがないです」
「じゃあ今言う。好きだ。結婚してほしい」
 心臓がまた跳ねた。
 私も好き。どうしようもなく好き。
 でも、どう答えたら良いのかわからない。
「この流れで言われても嘘くさいです」
 どうして私はこんなことを言ってしまうんだろう。慌てて私は付け足す。
「普通は、結婚の前にもう一段回あって、先にそういう申し込みをすると思うんです」
 なんのことだ、と小手鞠さんが言う。
 どんかん、と私は拗ねる。
 ここに森下さんがいたらいいのに。そしたらきっと「阿呆」と彼に言ってくれるのに。
「もう恋人同士なのに、あともう一段階?」
「え!?」
 そういえば、そんな話をしていた。
 そういう設定でやりすごす、という話だと思ったのに、この人は本気だったのだ。
 きちんと告白してくれないから悪いんだ、と私は心の中で文句を言った。
 彼と出会った日は、運がない、と落ち込んでいた。
< 41 / 42 >

この作品をシェア

pagetop