狼上司と秘密の関係
体験施設から出ると外がやけに明るいことに気がついて空を見上げた。
10月の6時はすっかり日が暮れているけれど、夜空には大きな月が出ている。


「わぁ! 今日は満月かぁ」


梨江が子供みたいにはしゃいで両手を空に突き上げる。
まるでそのまま月を掴んで自分の方へ引き寄せてしまいそうだ。


「綺麗だなぁ」


晋也が梨江の隣を歩きながら呟く。
道にはポツポツと街頭が立っているけれど、その役目はあまり果たしていない。
お客さんが完全にいなくなってから従業員が歩くためだけに付けられたものだから、人工的な光は少なかった。

だから余計に月明かりを感じることができた。


「あ、まずい」


千明が忘れ物に気がついたのは駐車場の手前まで来てからだった。
車のキーを出そうとバッグの内ポケットを探ってみても、なにも指先に触れなかったのだ。

「どうしたの?」


梨江が立ち止まって振り返る。


「鍵をどこかに落としてきたみたい」
「大丈夫? 探すの手伝おうか?」
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