狼上司と秘密の関係
千明はゴクリと唾を飲み込んで両手でエプロンを握りしめた。
「あれ以来、泊まったりしないのはどうしてなの?」
質問するときにはやっぱり恥ずかしくて大和を直視することはできなかった。

それにとても小さい声だけれど、大和にはちゃんと聞こえていたみたいだ。
「それは……そういうことをしたいってことか?」
真面目に質問されて余計に恥ずかしくなる。

千明は両手で自分の顔を覆い隠して「そこまで言わないでよ」と文句を言う。
すると大和は頭をかいて「ごめん」と、うなだれる。

しばらく静かな空気がふたりの間に漂った。
大和はなにも言わないし、千明も黙って返事を待つ。
やがて口火を切ったのは大和の方だった。

「正直、野性的な行動をすると、その……」
そこまで言って口ごもる。

見ると大和の顔は耳まで真っ赤になっている。
千明は上半身をソファの上に起こして大和を見つめた。
「制御がきかなくなる」
< 157 / 209 >

この作品をシェア

pagetop