狼上司と秘密の関係
「それは、前も聞いたよ?」
それでも千明たちは1度は関係を持ったのだ。
そのときに傷つけられてなんかいない。

大和もそのときのことを思い出しているのか、左右に首を振った。
「毎回優しくできるとは限らないんだ。気がつけば、牙で傷つけたり、してるかも……」

『牙で傷つける』というなんとなく官能的な言葉に千明は身じろぎをした。
自分の顔まで真っ赤に染まっていくのがわかる。

ふたりして向かいあい、赤面して黙り込んでいる様子はまるで中学生の恋愛みたいだ。
「だけどそんな風に不安になるなら、もう遠慮はしない」

千明がコクリと頷く。
今更遠慮されても困る。

自分はそのせいで仕事でありえないミスをしてしまったんだから。
「それなら、今日……俺の家に来る?」
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