水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 引き継ぎ等の準備もあり、最低一ヶ月は現職のままとなると、時間が惜しい。

 その辺りの融通をきかせてくれないかと遠回しに頼めば、社長は真里亜を見て怪しく微笑んだ。

 間違いない。この社長は真里亜を犠牲にすればなんでも真央の言うことを聞いてくれる。



「どうぞ、どうぞ。妹の身体はお好きなように……」

「ひやあ!お姉ちゃんの裏切り者……!」

「……真央」



 妹がより一層強く、社長に引き離されないように背中へ抱きついたのが気に食わなかったのだろうか。

 海里は硬い声で真央の名を呼ぶと、かつかつと足早に真央の所までやってくると、妹を強引に社長の方へ突き飛ばす。海里は妹が抱きついていたスペースに、すっぽり収まった。
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