身代わりお見合い婚〜社長に溺愛される365日〜

御曹司と結婚するということは。

 その夜、私たちは何度も重なり合った。

 互いの愛を確かめ合うように、体が触れ合う度に親密になっていく。

 恥ずかしさも、どこかぎこちない緊張感も剥がれ落ちていく。

 自分の素を見せるのが怖かった。でも、そんな恐怖感も貴富さんが優しく溶かしてくれる。

 朝になると、眠る貴富さんの横をそっと抜け出し、起きないようにゆっくりと寝室を出た。

(プレ新婚生活、頑張るぞ!)

 冷蔵庫を開けると綺麗に整頓されていた。野菜や卵、肉なども一通り揃っていたので、貴富さんは自炊するタイプなんだろう。

(綺麗好きでマメそうだもんな……)

 正直、料理は得意な方ではない。仕事が忙しすぎてそれどころじゃなかった……というのはもちろん言い訳である。

 できないわけではないけれど、栄養さえ摂れればいいだろ的な、ぶっこみ系の男前一品料理である。

(自分が結婚するなんて思ってもいなかったから、花嫁修業なんてしてないよ!)
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