ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
私はてっきり貴富さんは本部棟に行くと思っていたのだけれど、私と一緒に研究棟についてきた。またクリーンルームで、ただひたすら私を眺めるという行為をするつもりなのだろうか。正直それはやめていただきたい。

「あの、どこまでついてくるのですか?」

 ちょっと嫌そうな私に気がついて、貴富さんは慌てて言った。

「研究棟までだ。みんなに挨拶しておかないと」

「え、まさか婚約者ですって言うのですか⁉」

「もちろんだ。変な虫が芳美に寄ってきたらいけないからな」

 貴富さんの目が険しくなり、獰猛な剣幕が漂っている。やめてくださいとは口が裂けても言えない雰囲気だ。

 まあでも、今さら隠すのもおかしいかと思って覚悟を決める。本当に貴富さんと結婚までこぎつけるために、周りを固めておくことも必要だ。退路を断て! 田中芳美!

 研究棟に行くと、みんなが仰々しい挨拶をしてきた。私を横目で視線に捉えるも、愛想笑いを浮かべてくる。

(え、もしかして私だって気がついてない?)
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