ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
 私があからさまに嫌な顔をすると、有紗は頬を膨らませた。

「だから行きたかったけど、行けないって言っているでしょ。まあでも、今は大切な時期だからね、付き合うことになったら紹介してね」

「だから、そういうわけじゃないって」

 付き合うことになることは絶対にありえない。

 用事が終われば、もう会うことはないだろう。

 有紗も悠斗君とのデートがあるので、私は有紗の家を後にした。

 いったん家に帰り、時間を潰したあと、社長から借りた服を紙袋に入れて家を出た。

 待ち合わせ場所に向かう一歩一歩が、緊張して雲の上を歩いているようだった。これから社長に会うと思うと、心臓が鳴りやまない。

 日が暮れると、高層ビルの窓ガラスからは、茜色に染まった夕焼けが反射している。

 車のライトが徐々につき始め、都会の喧騒が静かな夜に移り変わっていく。

 待ち合わせ場所であるお店の入り口に着くと、社長がすでに立って待っていた。
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